第8話
産婦人科医のクリニックに通い始めて、仕事は相変わらず忙しいが、人任せにできるものは任していく様になって来た。始めは不安だったが、回りだすとと指示するだけで済むようになって、リリアからも
「良いチームになって来たわね」
と言われて、自分もそうだなと思うようになった。
リリアが、改まった感じで、相談があるから食事をしようと誘ってきた。いつもの、ホテルのレストランの奥の部屋だと思っていたが、セントラル・パークの近くのレストランだった。
「こんな所に、こんなレストランがあったんだ。あなたの使うレストランはホテルの奥の部屋だと思ってた」
「あそこは、トミーが、働いている時だけだよ。それに彼、ホテルのレストランを辞めたんだ」
「えっ、いつ?どうして?どうしたの?何故教えてくれなかったのよ、あなたらしくない」
「ごめんなさい、丁度あなたが熱を出して、大変な頃に彼のお父さんが、交通事故で亡くなった。だけど、お店は予約が入っていたから、彼が2週間仕事を休んでお父さんのレストランで働いたんだ」
「それで、ここを無くしたくないから、ホテルのレストランを辞めることになった、それで、リリアはどうするの?」
「秘書を辞めたい、彼の側にいて支えてあげたい。彼が、結婚しようって言うから」
リリアは、顔を赤らめて最後は小声で話す。
「了解、良いわよ、結婚おめでとう」
私は、手を出して握手を求めた。リリアも握り返してくれた。
「引き継ぎは、ちゃんとキャロルにして行くから大丈夫」
「そう、それなら良いわ、私は、カルフォルニアのホテルの改装が終わったら、私も一旦仕事を辞めて旅行に行く、別に日本だけじゃない、様々な土地を体験したいと思っている」
「カークの事はどうするの?」
「今考えている所だけど、今すぐに付き合わないわ、結婚もしない、アメリカに戻るかもわからないから」
「それって日本人の彼のところに行くの?」
「彼とは一度良く話すって言うか、話してから決めたい。それで、本当に別れるかも知れない、だけど、ちゃんと向き合ってみる。今のままではふらふらし過ぎだと自分でも思うから」
「カルフォルニアのホテルの改装を待たなくても良いじゃない。私の意見だけど聞いてくれる?」
「はい、しっかり聞く」
ケイトが、右手を挙げて言う。
「よろしい、あなたが、今の仕事は、リックの話を聞いて歴史的価値と現代の利便性を融合させることをリックの為に真剣に考えて仕事を進めてきた。あなたの性格は、これだと決めた仕事を始めると止まらなくなる、だから良い様にまわる時は良いけど、一旦節目に当たると回避を思いつくまでとことん突き詰めるでしょう今回のような土地の権利云々なんて、プロに任せれば良いのにって私は思っていたけど、あなたは結局身体が悲鳴を出すまでとことん突き詰めた」
「まぁね、関わらないとダメだと思っていたし、リックの初提案だったし成功させたかった」
「ケイト、リックは、オーナーに意見を求められて思いつくままに言っただけよ。リック自身オーナーがあんなに乗ってくるなんて思ってもいないから、びっくりしたってボブにメールが届いていた。リック本人は少し困っていたみたいだよ。ボブが、リックから相談受けたんだがコック見習いの俺に何を求めているんだって私に聞いてきたの、ホテルの本部に来ないかってオーナーが、直々に言ってきたからどうしたらいいかって、本人は断りたがっていたらしいわ」
「だから?あの子ジョージの会社に巻き込まれたと言ってきたのは?」
「多分ね、オーナーには子供がいるし孫もいる。大伯父だけど自分の家族より、リックの評価が昔から高いよね」
「うんまぁね」
「リックそれが嫌みたいって言うより嫌。だからボブと連んでいたようよ。ボブが、エレメンタリースクールでいじめられているリックを助けたのが始まりなのよ。知らなかったでしょう」
ケイトは、リリアの話を聞いて驚いていた。
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