7章③

       ◆  ◆  ◆


 立原の号令を合図に、黒蜥蜴たちが倉庫に雪崩れ込んだ。

 倉庫内の至る所で銃撃戦が起きた。

 スワロークラフトと双羽商会合わせて数十人に対し、黒蜥蜴は百人規模。その差は歴然だった。

 立原が銃で撃ち、広津が異能力で吹き飛ばす。

「くそ!」

 一人の男が、再び樋口を人質に取ろうとした。

 しかし樋口に触れる間も無く、銀によって首を切られた。

「この人には指一本触れさせない」

 短刀を構え、周囲を牽制した。

 勝ち目がないと悟り、逃げそうとする者たちも出始めた。

「逃げられると思うな」逃げる男たちに無数の黒刃が襲いかかる。「僕たちに手を出した罪、その命で償え」

 黒刃が男たちを貫いた。


「終わったな」

「ったく、張り合いの無ぇ奴らだったぜ」

 スワロークラフトたちは、黒蜥蜴によって倒された。

 対する黒蜥蜴には、多少の怪我人が出たものの死者は出ていない。

 芥川が樋口の元へ歩み寄った。「無事か?」

「申し訳ありません、お手数をおかけしてしまいました」

「構わん。よくやった」

 樋口に助けられた時のことを思い出した。

 ──あの時とは逆になったな。

 小声で呟いた。

 不思議そうな顔で樋口が見ていた。

「どうした?」

「い、いえ。なんでもありません」

 銀に支えられながら立ち上がると、倒れている敵を見た。

 ──一人足りない。

「どうかされましたか?」

「スワロークラフトのトップである、清佐田という男がいません」

「まことですか!? 一体どこへ──」

 そのとき──

「すみません。少しよろしいでしょうか?」

 構成員の一人がやって来た。

「取り込み中だ。手短に話せ」

「はい。奪われた品を回収するために木箱を確認していたところ、抜け穴らしきものを見つけました」

「場所はどこです?」

「こちらです」樋口たちを案内した。

 穴は壁に開けられており、人が一人通れるほどの大きさで、木箱で隠されていた。

「形から見て、人為的に開けたようですね」

「どうやら、ここから逃げたみたいだな」

「すぐに追いますか?」

「いや、その必要はない」

 血痕が倉庫内から穴を通り、外へと続いていた。「奴も手負いの様だ。直ぐには動けないだろう。ひとまずは戻る」

 倉庫をあとにした。

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