4章③
◆ ◆ ◆
「しかし、昼間にも目撃されているとは思いませんでしたね」
街ゆく人々を目線で追いながら、樋口たちはお茶を続けていた。
「昼に姿を現したのは、我々の捜査を撹乱するためでしょうか?」銀が問いかけた。
「分かりません。ですが、そう考えていいかもしれません。トラックに関しては先輩たちも調べてくれています。私たちは引き続き、調査を続けましょう」
──視線を街に向けた直後。
「銀──!」
探していたトラックが目の前を通り過ぎていくのが見え、思わず叫んだ。
──しまった。この任務中に大声で名前を呼んでしまうなどあってはならないミスだ。どうする?
我に返った樋口は焦りを隠すのに必死だった。
「もうこんな時間でしたか」
銀は腕時計を見る仕草をした。
しかし、時計をしているわけではない。演技だ。「次の予定に遅れてしまいますね。行きましょう、奈津さん」
銀は立ち上がると、樋口の横に立った。
「銀・・・・・・」
「話を合わせてください。今ならまだ、他のお客さんを誤魔化せます」耳打ちした。
周りを見ると、数人の客が少々ザワザワしていた。
「さぁ、早く参りましょう」
「──そうですね。急がないと遅刻してしまいますね」
カフェを後にした。
二人は走り去ったトラックを追っていた。
「先ほどはありがとうございました。銀」
「いえ。私も気付いて、思わず声が出てしまいそうでしたので。奈津さんのおかげで上手く誤魔化せました」
トラックを追っていくと、見覚えのある通りへと出た。「奈津さん、この道はまさか・・・・・・」
「ええ。そのまさかです」その道は、昨日訪ねた店がある通りだった。「急ぎましょう。上手くいけば、これまでの謎が解けるかもしれません」
通りを進んでいくと、建物脇の路地へトラックが入っていくのが見えた。そこは、人の出入りが夜な夜な頻繁に目撃された建物だった。
路地を覗くと、停車しているトラックが見えた。作業をしているのか、車体が何度も揺れていた。
「この建物と関係があるのは間違いなさそうですね」
「ええ。しかし、謎が全て解けたわけではありません。このビルとあの運送業者に一体何の関係があるのか? それを調べなければ・・・・・・」その時、樋口の携帯が震えた。
「樋口、すぐこちらに戻れ。進展があった」
「かしこまりました。こちらもご報告したいことがありますので、すぐに戻ります」電話を切った。「先輩から戻るよう指示です。行きましょう」
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