5章①

 執務室に芥川がやってきた。

「揃っているか?」

「まだ、樋口殿と銀が来ておりませんが?」

「構わぬ。始めろ」

「かしこまりました。では・・・・・・」

 広津の合図で、構成員たちが次々と報告を始めた。その多くが、トラックの目撃情報だった。

 トラックは摺鉢街だけでなく、他の貧民街や港湾部の倉庫街でも目撃されていた。

「至る所で目撃されてるな。しかも、そのほとんどが深夜か・・・・・・」

「引き続き調査が必要ですな」

「僕の得た情報だが・・・・・・」

 直後、扉が開いた。

「すみません。遅くなりました」

 樋口たちが入ってきた。

 走ってきたのか、少し息が切れている。

「遅いぞ樋口。何をしていた?」

「申し訳ありません。その件も踏まえてご報告があります」

「ならば早く報告しろ」

「はい。まず例のトラックについてですが、新たな情報を得ました。系列の宝石店で聞き込みをしたところ、従業員の一人が昨日の昼間に目撃していました。その者の証言によれば車体は白色で、側面には燕のマークと“スワロークラフト”という社名が書いてあったと言うことです。この辺りでは見慣れない運送業者でしたのでよく覚えていたそうです。そして、我々もそのトラックを目撃しました」

 室内がざわついた。

「続けろ」

「はい。街を歩いていると、通りを走って行くの見ました。急いで後を追っていったところ、昨日訪ねた店のある道を通って例のビルの路地へ入っていくのが見えました。外から様子を伺ったところ、裏口辺りに停車して何やら作業をしているようでした」

「怪しい連中だと思っていましたが、ますます怪しいですな」

「それと、そのビルに関しても報告があります」

「なんだ?」

「こちらへ戻るのが遅れた理由にも繋がるのですが、実は・・・・・・」

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