第9話
一方、女子部屋では恋話が飛び交っていた。
部屋に駆け込んできた瑠記は、両頬を叩いて気合いを入れ直す。
荷物から持ってきていた濁り酒を取り出すと、ちびちび飲みだした。
「王様、玉露君のお話大丈夫でしたか?」
咲がすすす、と瑠記の隣に行き酌をする。
「ああ、すまん、申し訳ない、お妃様に酌など…」
「いいの、王様と会える機会あんまりなかったしお話ししたくて」
嬉々とした咲の目に、確かに純粋な可愛らしい姫だな、と瑠記は微笑んだ。
短い男のような黄緑の髪をした瑠記は一見確かに男のように見えるかもしれないが、王家の次女である。
「うちは男兄弟がいなくて、姉は嫁いでしまったし特例であたしが陛下の書記官をさせてもらっているんだ」
「瑠記ちゃんの書状、すっごく綺麗で兄上も読みやすい、って褒めてたよ」
瑠記は、照れ笑いをしながら皆を見渡した。
花梨だけが浮かない顔をして俯いている。
「花梨、ずっと元気ないの、何処か具合悪いの?」
咲も心配そうに花梨に声を掛ける。
何でもありません、と小さな声に、唯はため息を吐いた。
「なんでもなくないでしょ、ずーっと胸が痛くて苦しくて困ってるでしょ?」
唯の声に花梨が顔を上げた。
「本当のことを言えばいい、今日だけ許す!」
無理です、無理なんです、とボロボロ泣きだす花梨を咲が抱き締めた。
「女子しかおらんし無礼講ってことで言って楽になるのも手だぞ、明日からも旅は続くしな」
瑠記も、盃を傾げながら、唯に合図を送る。
先程、玉露に聞いた。きっと同じ件だろ、と唯に囁く。
「花梨、話して?何に苦しんでいるの?」
花梨は、咲を見て土下座した。
「申し訳ありません、お妃様、私は陛下が好きなんです、好きなんです…」
床に頭を擦るほど小さくなる花梨に状況が飲み込めないまま、咲は呆然とした。
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