第7話
「今、女性陣が風呂だとよ。入ってきたら飛び蹴りして三角締めして落としてやるって唯に脅された」
部屋に戻ると、先に風呂に入った一途、黄、風虎が遊びに来ていたので、キョトンとすれば兢があくび混じりに文句を言う。
「温泉、初めて入りました、気持ちよかったです」
ホクホクしながら笑顔の黄に、春蘭は目を瞬いた。
紅焔が笑った、と物珍しそうについ凝視してしまうと、黄が首を傾げる。
「ああ、すまぬ、紅焔が笑顔だったものだから珍しくてな」
「そうですか?国王陛下は笑うととても可愛らしいですよ」
思ったことをすぐに口にしてしまう質なのだろう、春蘭は、あ、いや、そんなことは、と目を反らす。
こいつ、照れてんだよ、と兢が笑う。
一途が目を逸らしたままの春蘭を見れば真っ赤になって俯いていた。
本当に可愛らしい王様だ、と口にはしないが一途も微笑む。
疲れたのか、自分の寝台で横になったまま玉露はウトウトしていた。
その側に風虎が行く。
「玉露はお風呂やめとく?もう眠いんだろ?」
「えと…どっちですか?」
うっすら目を開けるが、声が遠くに聞こえて兢なのか風虎なのか判別出来ていない。
困ったようにため息を吐くと風虎は、好きな方だと思ってて、と玉露の頭を撫でると、もう寝な?子供は寝る時間だ、と寝具を掛けてやる。
女性陣が風呂から戻る気配で、春蘭、兢、清良も湯屋の道具を持ち風呂に向かう。
作戦会議は、憩兄弟と黄の部屋に変更になった。
「上がり次第明日の予定を」
一途の指示に、春蘭が頷くと一行は別れて、それぞれの目的に。
暗くなった部屋で、玉露は目を開けた。
本当は眠かったわけではない。
清良から離れたかった。
ずっと気付いていた。
同じ人を見ているもう一つの視線に。
誰に言えばいいんだろう?
迷いながら、女性陣の部屋を訪ねることにした。
出来たら、瑠記殿と話がしたい。
扉を叩くと、咲が、はーい、と可愛らしい声を上げて出てきた。
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