あこがれの異世界転生!?
高山小石
あこがれの異世界転生!?
目覚めたら見覚えのない場所だった。
しかも自分自身が見慣れた姿とは違うし、文化レベルも違う。
でも、今の体が誰で、この体がここで暮らしてきたであろう記憶もわかる。
これがかの有名な異世界転生で、記憶が戻った状態なのか! と思ったのに、どうやら違うようだった。数日で、また同じことが起こったからだ。
見知らぬ場所、違う文化圏、唐突に今までの自分を思い出す。そんなことを繰り返す。
あぁもしかすると、異世界転生じゃなくて、いわゆる憑依転生というヤツだろうか。
この憑依転生? 転生憑依? というのは造語なうえに定義も曖昧だが、おおまかなところ、ガッツリ転生して本人そのものになったわけではなく、本人の存在に
代金も支払わないのに間借りするのも申し訳ないが、体も持ち合わせも皆無なのでどうしようもない。少しでも
なるほど。本人は過去の出来事から物事を悲観的にとらえてしまうのだろう。
本人はすでに悲観的な予想を立てることが普通になっているようだが、他人である私は違う。
そうだ。本人が散々苦悩していたことも、第三者視点でなら思いがけない解決策につながることがある。私の滞在期間は短いので、問題解決までは至らないかもしれないが、まったく違う切り口だけでも残せたら。
思いついてからは、新しい体に憑依するとすぐに本人が困っていないか探った。いつ切れるか私にもわからない滞在期間だ。特に問題なければ違う自分違う文化を楽しみ、問題を抱えていればどうにかできないか考える。
少し残念なのは、私の滞在時間が短いので、そのあとどうなったのかわからないことだ。
今また別の自分として目が覚めた。
どうやら今回の人物は『あこがれ』がなくて困っているようだ。「『あこがれ』がない自分にはなにも書けない」と思い悩んでいる。
『あこがれ』とは、平たく言うと『なんでか好き』や『そう(同じように)なりたい』という気持ちだ。
本人はキラキラした目標だけが『あこがれ』だと思い込んでいたが、それだけが『あこがれ』ではないよ、と思考したあたりで、早くも私は別の体に移っていた。
書けていればいいな。
あこがれの異世界転生!? 高山小石 @takayama_koishi
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