第23話 恋の予感
「おいハース、さっさと起きるにゃ」
……今、誰かに名前を呼ばれたような……。
……いや、気のせいか……。
「シェルヴィ様、起きてください……にゃ」
……あれ?……。
……シェルヴィ様も呼ばれてる?……。
……いや、尚更気のせいか……。
「うむ……もう朝なのだ……?」
眠そうな目を擦り、一足先に起きたシェルヴィ様。
「はぁ、シェルヴィ様はすっと起きれて偉いにゃ。
それに比べてハースは……。
あっ、そうにゃ!
ふっふっふ、いいこと考えたにゃ」
……あれ?……。
……なんか急に身体が軽く……。
……それになぜか寒気が……。
「ぽいにゃ!」
……あれ?……。
……急に身体が重く……。
「痛っ」
この感じ、俺は草の上に落ちたのか?
「ほら、起きたにゃ」
「今、お姉さまが悪魔に見えます……にゃ……」
「でもクロは魔族だから、あながち間違いでもないのだ……」
「ちょっと、2人ともひどいにゃ!
うちはこの寝坊助を起こしてやっただけにゃ」
ゆっくり目を開けると、そこには雲ひとつない青空が広がっていた。
これぞ朝って感じの空だ。
でも、どうして俺は外に……。
まぁいっか。
「ふわぁ~、おはようございます」
「おはようにゃ」
「おはようございます……にゃ」
「ふっふっふ、ハースは寝坊助なのだ。
次は我と同じように早起きするのだ」
「はい、申し訳ありません。
次はすぐに起きられるよう、精一杯頑張ります」
「うむ」
この時、クロさんとシロさんが、俺に何かを伝えようとしていることに気がついた。
う~ん、シロさんじゃ分からんっ!
シロさんのあまり動かない口では何も分からなかったため、クロさんの口元をよく見てみると、こんな感じのことを言っていた。
(起、き、た、時、間、ほ、と、ん、ど、一、緒、にゃ)
おそらく、シェルヴィ様が強がっていることを俺に伝えたかったのだろう。
しかし、どちらにしろ、シェルヴィ様が可愛らしいことに変わりは無い。
「おい、我は早く釣りがしたいのだ」
「おっとっと、そうだったにゃ。
ハース、荷物は任せたにゃ。
よ~しシェルヴィ様、うちらは先に釣り場へ行くにゃ」
「うむ!」
2人は一足先に、川のある方向へと歩いていった。
釣り場へ行く道は一本道であると共に、綺麗に整備されており、とても分かりやすい。
「あっ、はい」
荷物運びか……。
まぁ寝てたし、俺は男だし、荷物運びが仕事だよな。
「よしっ」
俺は1度荷車に乗りこみ、大きなバッグを手に持つと、クロさんとシェルヴィ様の後をゆっくり追った。
釣竿が入っているからか、かなり横長なバッグは、持ちづらさも相まって、なかなか重たい。
「あ、あの、ハースさん、よければ私も持ちましょうか……にゃ?」
自分自身もバスケットを手に持っているというのに、持ちましょうかと言える優しいシロさん。
正直、非常にありがたい申し出だ。
しかし、男という生き物は単純で、こういう時に限って維持を張ってしまう。
「いえ、大丈夫ですよ」
ちなみに、2頭の白馬はとても美味しそうに平原の草を食べている。
フブキ、アラシ、君たちはこのバッグに加えて、俺たち4人を運んでくれた。
本当に、本当に、ここまで運んでくれてありがとう。
次は、俺が運ぶ番だ!
「よし、俺たちも早く行きましょう」
「はい……にゃ」
(ハースさん、たくましいです……にゃ)
10分後……。
「おっ、やっと来たにゃ」
「ハース、遅いではないか!」
「はぁはぁ、すみま、せん……」
「お待たせ致しました……にゃ」
俺がバッグを地面に置くと、すぐにクロさんが釣竿を組み立て始め、瞬く間に準備を終えてしまった。
「よし、釣り開始にゃ!」
「うむ、我の力を見せてやるのだ」
釣竿を片手に川沿いを歩く2人。
「おふたりとも頑張ってください……にゃ」
「はぁはぁ、シロさんは、釣り、しないん、です、か?」
「はい。
私はいつもレジャーシートを敷いて、日傘をさして、お姉さまが楽しそうに釣りしている姿を眺めているだけです……にゃ」
「それって、楽しいですか?」
「はい。
楽しそうに釣りをするお姉さまは、とても綺麗ですから……にゃ」
ほんと、2人は正反対なんだな。
でも……。
「それはもったいないですね」
「え?」
「だって、シロさんも綺麗なのに」
……あれ?
俺今、なんて言ったんだっけ?
「お~い、ハース早く来るのだ!」
「あっ、呼ばれちゃったので俺も釣りしてきますね」
「お、お気をつけて……にゃ」
(綺麗? 私が? 綺麗? 私が?)
「ってか、シロさんも来ます?」
「い、今は少し、行けそうにないです……にゃ」
あれ?
少し顔が赤いような……。
あっ、そうか。
「確かに、運転でお疲れですよね。
なら、少し休んでから来てください」
「分かりました……にゃ」
俺は釣竿を持って、2人の元へと走った。
「ハースさんはずるい……にゃ。
はぁ、少し身体が暑い……にゃ」
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