第24話 磁力線スコープ

 バルクの額に汗がにじみ始めていた。パズルは続けた。「伝説の空賊クーク船長の隠したと言う宝物さ。こいつは数億の価値があるという本物の宝だ。魔法ランドがつぶれたとき、管理会社はこの宝物を回収せずに、魔法ランドに隠したままにした。なにしろ、1500メートルの上空でモンスターに守られているからね。ここはどんな金庫よりも安全だ。つまり、管理会社があんたみたいな盗賊から宝物や高額アイテムを守るためにモンスターたちのプログラムを書き換えていたのさ。人間に手加減をし、最後はわざと負る、のがテーマ・パークのモンスターのお約束のプログラムさ。それを技術者たちは、人間を本気で襲え、と書き換えたんだ」

 パズルがそう言った途端、床がガクンと大きく揺れ、照明がチカチカと点滅した。ピューと空気を切って物が落下してくる音がしたかと思うと、ドッシィーンと天井に凄まじい衝撃が加わった。床が激しく揺れ、部屋が暗くなって、パラパラと天井から細かい破片がふってきた。とっさに僕は頭をかばってしゃがんだ。衝撃が収まった後、照明が点いた。僕はソッと頭から手を離した。

「おい、何いじくってんだ」と、バルクが、半円ドームの傍にいた僕らに向かって怒鳴った。しかし、僕とセブは床にしゃがんでいた。磁力線の操作パネルをいじっていたのは小人だった。小人は、ほっぺたを膨らましたりすぼめたりしながら何か小声で呟き、惚けた顔で、磁力線スコープの操作パネルをめちゃくちゃにいじり回していた。

「おい、そいつを止めろ」とバルクが僕とセブに向かって怒鳴った。

 また、グラッと床が斜めに傾いだ。バルクとパズルがよろけている。

「どいて」と僕はセブに叫び、衝撃で床に落とした銃を拾い上げ、小人に向かって狙いを定めた。引き金を引くと、銃口からウィンウィンと音をたてながら、小さな光の輪っかがシャボン玉のように連なって飛び出てきた。それは連続して小人の耳に命中した。小人はあわてて耳を押さえて、操作パネルから離れた。その隙にセブが小人にタックルし、半円ドームから遠ざけて転ばせた。小人は頭をしたたかに打ったかと思うと、首が曲がって取れた。小人は、立ち上がると、首を背中にぶら下げたまま、あいつ嫌い、やだ…、死ねばいいのに、などとぶつぶつと呟きながら辺りをうろつき始めた。それを唖然として眺めていると、ズズッと地鳴りのような音が床から響いてきた。

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