第25話 マゼル
「見て」とセブが磁力線スコープを指した。見ると、魔法ランドのジャングルの地表にプワープ城が突き刺さっていた。
「この上だ」とパズルが天井を見上げた。
と、地鳴りを上げながら床がさらに斜めに傾いだ。ギリギリと金属とコンクリートが軋む音がしてきた。
「やばい、こりゃ…魔法ランドが崩壊するぞ」そう言ってバルクが天井を見上げた。
「逃げよう」とパズルが青い顔で言った。
「でも、逃げてもモンスターに襲われるんじゃないのッ」とセブが怯えきった顔で言った。
「そうだ……くそう」とパズルがこぶしを握りしめた。そして、コンピュータに呼びかけた。「マゼル、マゼル!」
と、コンピュータから「私はマゼルです。お呼びでしょうか?」という声が聞こえてきた。
「マゼルか?」と、それにパズルが訊いた。
「はい。私はこの地の新しい領主マゼルです」
「領主だって。なぜ、僭称してる?」
「もうすぐ私は目的を達成します」
「お前の目的はルーサー大王とグリズリと人間に負けることだろう。僕たちを殺すつもりか」とパズルがマゼルに問い詰めた。
「あなた方は邪魔ものです。グリズリは私の兄です。兄は人間たちが去った三年前からプワープ城の石牢に閉じ込めてあります」
と、壁の大きなモニターが点き、そこに牢屋に閉じ込められている黒衣の白いヒゲの老人が映し出された。老人は部屋の隅に膝を抱えてしゃがんでいたが、僕らの存在に気付くと、よろよろと立ち上がって、モニターに近づいてきてしゃべった。
『おお…、来てくれたのか。君たちを呼んだのは私だ。私は、この牢で君たちがやってくるのをずっと待ち続けていた。君たちに頼みがある。どうか邪悪な魔法使いマゼルを倒し、この魔法ランド王国を守って欲しいのじゃ』とプツンッとモニターが消された。
「どうやら、兄が、ピックを使って、あなた方を魔法ランド王国へと呼び寄せたようですね。でも無駄なことです。もう誘拐した姫君はこの世にはいません。二人の侍女とともにとっくの昔に自害しました」
と、またモニターが点いた。そこには石牢の床に倒れている三体のサビついたロボットの姿が映し出されていた。
「何を言ってるんだ。魔法ランド王国なんてくれてやる。僕らは廃墟を見学しに来ただけだ。無事に返すんだ」
「そう、魔法ランド王国は私がいただきました」
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