第19話 ロボットが本気で人間を襲う

 そう言ってピックは僕の隣から羽ばたきの速度を一気に上げ、前へと飛んで行く。僕はピックを指さし、パズルとバルクについていくようにと合図した。二人ともわかったのか、ピックと僕の後について来る。ピックは火山へ向かって飛んでいく。だんだんと巨大な滝と山肌が迫ってきた。ピックは流れる滝へと向かっていった。そして激しい流水の中へと消えていった。

「おい、滝に突っ込んじまったじゃないか」とバルクがピックの消えたところを指して、叫んだ。

「ついていくしかないさ」と僕は言った。

「滝に呑まれるぞ」

 そう叫んだバルクのすぐ傍を火柱がかすめていった。「前は大水。けど、後ろは大火事か。行くしかないか」

 僕はピックの消えた滝の中へと突っ込んだ。瞬間、放水を上から浴びたようになったけれども、僕と鳥は滝を潜り抜け、その裏にあった洞窟に滑り込んでいた。ドウドウと、手綱を引き、鳥の両翼を拡げさせ、洞窟の中に止まらせた。後から続いて、パズルとバルクも飛んで来て止まった。滝の方を振り返ったら、火竜の二つの頭が洞窟に突っ込んできた。二つの頭は、そろって僕らへ向かって火を噴こうとした。しかし、両方とも、水をかぶったせいか、その口からは小さな黒い煙がポッと上がっただけだった。火竜は二つの頭が滝を潜り抜けたものの、翼が洞窟の入り口にひっかかって、胴体までは入れなかった。やがて、火竜は水圧に抗しきれなくなって、雄たけびを上げながら、滝壺へと落下していった。それを見て、僕らは、ホッと息をついた。

「なんて危険なアトラクションなんだ。本物の火炎を放射するなんて」と僕は言った。

「人々がどんどんスリルを求めるようになったから、ああなったんだ。今の若いやつの中じゃあ、自殺や自傷がサブ・カルチャーといわれるほど大はやりしてるだろ。スリルの最終形さ。そこまでやらないと生きてる実感を得られねえやつがいっぱいいるんだ」

「だけど、どんなに危険なアトラクションでも、テーマ・パークのロボットが本気で人間を襲うなんていうことはあり得ないはずだ」とパズルが言った。

 そうだ。パズルの言う通りだ。

「何かおかしい。これは……」とパズルが首をひねった。

「どういうこと?」

「ロボットを操るコンピュータが狂っているとしか思えない」

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