第18話 僕はピック

 火竜は、セブの鳥の両翼を両肢でつかんでいる。と、鳥の翼の片方が根本から千切れた。それで、鳥の胴体が片羽だけで火竜の片肢にぶら下がった。その胴体にはセブが手綱をつかんでぶら下がっている。しかし、残っていた片羽も根本から千切れ、セブは鳥の胴体ごと、ジャングルへと落ちていった。

 セブ! と僕とパズルは同時に叫んだけれど、セブの姿はジャングルに吸い込まれて見えなくなった。僕とパズルはすぐにその上空まで行って、ぐるぐると旋回しながら、セブ、と叫んで、その姿を探した。けれども、白い靄と繁った葉に遮られ、見つけることができなかった。

「何してる、早く逃げろ」とバルクの声がした。見ると、火竜がこちらへ飛んでくる。

「しつこいやつだね」とバルクはトンボの首を返して下降していった。「お先に」と叫びながら。僕の方はセブの落ちていった辺りを見下ろして、もう一度叫んでみた。

「逃げよう」とパズルが言った。

「でも、セブは」

「ぐずぐずしてたらおれたちまでやられる。そうしたら救出できないだろ」

 そう言ってパズルも、乗っている鳥の首を返して下降していった。僕もその後を追う。僕らはジャングルの上を滑空していった。ボンゴ川を横切ったところで、ゴーッという轟音が後ろから響いてきた。振り返ると、火柱がすぐ背中にまで迫ってきていた。僕はあわてて横滑りをして炎の先端をかわした。再び、轟音がしたので振り返ると、火竜が火炎を吹き出すところだった。僕はまた横滑りをしてかわす。火柱がすぐ真横をかすめる。焦げくさい臭いがするので振り向くと鳥の尻尾に炎が燃え移っていた。僕は手綱を思いっきり引っ張って急上昇した。きりもみして水平を保ってから振り向くと、尻尾の火は消えていた。前方の火山の方から翼を広げた黒い鳥がこちらへ飛んでくる。振り返ると、火竜のやつもしつこく追ってくる。向き直ると、黒い鳥もぐんぐんとこちらに迫ってくる。旋回急降下しようと思ったけども、もうその黒い鳥は僕のすぐ頭上にまで迫っていた。その黒い鳥は僕のすぐ横へ急降下してついた。ピックだった。

「僕はピック、魔法使いグリズリの使いだ。邪悪な魔法使いマゼルに操られた火竜が君たちを襲おうとしている。逃げなくてはいけない。さあ、僕についてきて」

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