第17話 アトラクションの火竜
翼竜の頭の一つが僕らへ向かって火炎を吹き出した。火炎は真っ直ぐに十メートル近くまで伸びてくる。そして、ポッと消える。と、次はもう一つの頭が火炎を吹き出した。この双頭の翼竜は火竜だった。火を吹く竜だ。
それを見たパズルが「ああ、やばそうだ……」と言って、乗っている鳥の首を返した。
「片一方が火ならもう片一方は消火剤にすればいいのに……」とセブが言う。
「全く、その通りだ」と呟き、僕も鳥の手綱を横に切った。
反転して前方を見ると、遥か低空の、ボンゴ川の川面の上を一匹のトンボが滑るように飛んでいる。バルクだった。もう、あんなところまで逃げてる。僕も急降下した。僕の斜め前でパズルも急降下している。ボンゴ川のあちらこちらで反射した陽光がきらめいている。そこへ向かって僕は一直線に下降していった。川面がみるみるうちに迫ってくる。グッとつかんだ手綱をじりじりと引いていく。それにつれ鳥の首も徐々に上向いていく。川面にぶつかる寸前で、力を込めて手綱を引っぱって、鳥の首を水平に戻す。その瞬間、身体が後ろへ引っ張られ振り落とされそうになった。僕は握った手綱を離すまいと必死に力を入れた。ドンッと底部から音がして振動があった。水面をかすったようだ。僕は水面ぎりぎりを鳥で滑空していた。前にはパズルがいる。振り返ると、後ろにセブがついてきていた。と、セブが僕の上空を指さし、何か叫んでいた。見上げると、火竜が僕の真上を飛んでいた。火竜は三角の鋭い爪を立て、徐々に、僕の頭へと迫っていた。爪の一本が僕の肩口へ徐々に迫り、次には、三本の爪が僕を囲んでいた。僕はとっさにスピードを緩め横滑りして爪の檻から逃れた。次の瞬間、僕と鳥のすぐ横で三本爪はガキンッと虚空をつかんだ。僕をつかみ損ね、少し浮き上がってしまった火竜は、今度は、セブの背後に近づいていった。逃げながら、セブが叫んだ。
「ねえ! これ本当にただのアトラクション?」
アトラクションにしては危険すぎる。もし、さっきの爪につかまれていたら間違いなく、僕は死んでいた。
「いや、ただのアトラクションじゃなさそうだ」僕はそう叫び返した。
突如、濃い霧の中に突っ込んだかと思うと、川が途切れ、僕は魔法ランドの突端の滝の上空を飛んでいた。セブの叫び声が聞こえた。振り返ると、セブと鳥が火竜の肢につかまっていた。獲物を捕まえた火竜は悠々とジャングルの上空へ飛んで行く。僕らは旋回してその後を追った。
「一体、どういうことなんだ」とパズルがバルクに言った。
「わからん、ロボットが手加減無しに人間を襲うはずはないんだが……」とバルクは首をひねった。
「そんなこと言ったって、セブがオーニソプターごとわしづかみにされてるじゃないか」と僕も叫んだ。
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