第2話
「優里!」
いつもとは違い、帰宅早々ガバッと私に抱きついてきた慶太に、私は心底驚いた。
「へ?ど、どうしたの、いきなり」
「結婚しよう!」
私が彼の背中を軽く叩き、苦しいよと伝えると、慶太はやっと私から身体を離してくれた。
「え、何、本当にどうしたの?」
「許してもらえたんだ。優里の父さんに。今度の休み、改めて優里と一緒に結婚の挨拶に来いって言われた」
訳が分からないまま慶太の話を聞くと、最近仕事帰りに私の父に捕まったり、家でやってこいと謎の仕事を増やされたりしていたらしい。
慶太の上司は、私の父だから。
「……そう、だったんだ」
私は安心したせいか、突然身体の力が抜けてその場に座り込んだ。
「もしかして、嫌だった?俺と結婚するの」
私と視線を合わせてくれた慶太の顔が、不安そうに揺れている。
「そんな訳ないよ。嬉しいよ、でもちょっとびっくりしたの。私、もうすぐ振られるのかと思ってたから」
「なんで!?」
「最近、浮気されてるのかと思って。最近の慶太、帰り遅いし、部屋に引きこもってたから」
「へ?浮気なんてする訳ないでしょ、俺がどれだけ優里のことが好きだと思って!」
慶太の顔が、焦った表情に変わる。絶対ない、それだけはないと何度も繰り返し言ってくる慶太に、私は思わず笑ってしまった。
「……優里、なんで笑うの」
「ううん。好きだなって思って、慶太のこと」
私が微笑むと、拗ねた顔をしていた慶太の表情が崩れた。私達は見つめあって、微笑み合う。
「今日、俺の部屋で寝る?最近、ずっと別々だったから」
少しの沈黙の後、慶太に囁かれた私は、思わず顔を赤くする。
「うん」
私達の幸せな日々は、これからも続いていく。
幸せな日々は 優月紬 @yuzuki_tumugi
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