瀬田 梨花
中学校の入学式から2ヶ月ほどが過ぎた頃、瀬田 梨花はやっと休み時間を共に過ごせる「友達」が出来た。
梨花は中学進学のタイミングで引越しをしてきたために、この学校には知り合いが居ない。クラスメイトは小学校時代の友達や知り合い単位で固まって、梨花が入る隙がなかったのだ。
いつもなんとなく本を手にして机について過ごしていたが、ある時一人の女生徒が声をかけてきた。
「瀬田さん、次音楽室だよ。一緒に行かない?」
「うん、行く」
音楽の教科書と縦笛を手に声をかけてきてくれたのは、同じクラスの吉元 麻美だった。梨花がいつも肌が綺麗だと羨ましく思っている子だった。
梨花はアレルギーがあり、顔から首にかけて薄いアバタがあるのだ。季節のかわりめには痒みが出るので、みんなのように化粧も出来ない。
自分の髪が触っても顔が痒くなるので前髪も上げ、二つにくくった髪を解くこともない。
「いいなぁ。麻美ちゃんみたいにツルツルのスベスベな肌、あこがれるなぁ」
朝顔を洗う時、鏡を見ながら梨花は呟くのだった。
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