変わる君変わらない俺

広川 海未

変わる君変わらない俺

「なぁ、飲みに行かないか?」

仕事終わりに駐車場を歩いていると、数年ぶりに同級生から連絡がきた。金がなかったわけではないしその日はたまたま次の日が休みだったから食べに行った。場所は学生時代によく行った駅の近くの鯛焼き屋。最近は夜になると居酒屋もやっているそうでそこに来てくれと連絡があった。

いつもはゆっくりちびちび飲むのにあいつはその日、ぐびぐびと速いペースで酒を飲んでいた。唐突に鯛焼きを頼んだ。鯛焼きが着くといきなり

「俺、結婚するんだ。だからこれが最後の飲みになるかもしれないんだ」

そう言う彼の顔には嬉しさと少し寂しげな雰囲気が漂っていた。出てきた鯛焼きは店主が変わって昔よりもパリッとした生地に変わっていた。棚には来年末で閉店すると書かれた張り紙。隣の人が3年後にここにできるマンションに住むことを嬉しそうに話していた。そこで気づいた。

あぁ世界は変わっていくんだ。変わらないのは俺だったのか。

「幸せになれよ。」

「ありがとうな」

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変わる君変わらない俺 広川 海未 @umihirokawa

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