おひなさまクエスト2。ドラゴンへの凸凹道

土岐三郎頼芸(ときさぶろうよりのり)

ドラゴンへの凸凹道

(本作は『おひなさまクエスト。A級冒険者たちのひなまつり!今回のミッションは伝説のおひなさまの生け捕り⁈』の続編となっております。)

https://kakuyomu.jp/works/16818622170440930739/episodes/16818622170444813551



 モッコ・ド=アラゴンはドラゴニュート竜人国、ド=アラゴン家の王子である。顔はいかついがまだ未成年だ。


 モッコには夢があった。


 早く一皮けてタテガミがもっさもっさの大人のドラゴニュートになること……ではない。彼の夢はその先にあった。


 になること。


 モッコはドラゴンにあこがれていた。


 言い伝えでは天空のどこかにあるという天空竜の城に行けばドラゴニュート竜人は真のドラゴンになれるというのだ。ただしそこにはロック鳥に乗らないとたどりつけないといわれている。


 それには、いま目の前にいるロック鳥のヒナ『おひな様』をテイムしなければならない。しかし、姿形こそかわいい黄色いヒヨコ🐤であるが、高さ10メートル、3階建ての建物並みの巨大な『お雛様』だ。そう容易たやすいことではない。


 だからこそ、モッコはアラクネのコマチ・ネネとドワーフのヨーイドンのQPコンビとパーティーを組んだのだ。なのだが……


「ひいいいいいいいいいいいいい!」 


 ティラノサウルスの姿のモッコが命がけでひた走る。


 ゴオオオオオオオッ! ゴオオオオオオオオオオオ!


 ティラノサウルスの倍ほどの大きさの巨大ヒヨコ『お雛様』が、モッコを追いかけながら吠える。いや、単純に鳴いているだけだがこの巨体では鳴き声はピヨピヨにはならず、もはや雷鳴か嵐である。


『お雛様』にとっては巨大な肉食恐竜ティラノサウルスもただのエサにしかみえないのだ。モッコの背中をついばもうとくちばしから頭を振り下ろす。


 ガゴオオオオオオオオオオオン!


 轟音が響き渡り、とあたり一面土埃が舞う。


「死むうううううううう! 死んじゃうううううう!」


 ミス!


 モッコは『お雛様』の攻撃をギリギリ横っ飛びに転がってかわした。モッコは泣きながら立ち上がると全力疾走する。


 ゴオオオオオオオッ! ゴオオオオオオオオオオオ!


 逃げたモッコに気付いた『お雛様』が再び追いかける。


「助けてちょおおおお! 限界だおおおおお!」


『お雛様』とリアル鬼ごっこ中のモッコがべそをかきながら叫んだ。


「おいの『マジック・泥成土ドロナルド』は超速乾ばってん、半乾きのうちは動かせんばい。もうちっとがんばって走りんしゃい!」


 自分の作業を終えて、ビーチチェアに寝っ転がってくつろいでいるドワーフのヨーイドンがこたえる。あたりにいくつも並んでいるコンクリートっぽい巨大な直方体やら球体がヨーイドンのスキルの成果だ。


「あとどんだけ~~~!」


「3分ほどたい」


MURYYYYYYYYYY無理いいいいいいいいい! 無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理!」


「おおおお、時間を止められそうな、ふとかパワーを感じるたい」


「止めないで! むしろ進めて!」


「いとさわがし。うぬのせいでわらわが瞑想で力を貯められんではないか!」


 やはり、ビーチチェアに寝そべっていたアラクネ美熟女のコマチ・ネネが眉間にしわを寄せて起き上がり、サングラスをずらしてモッコをにらむ。


「ただ、寝転んでるだけでしょうが! なんとかしてちょおおおお!」


「トリのエサの分際ぶんざいで生意気だのう」


「いま、エサって言ったあああ!」


「すまぬ。つい本音が漏れたぞよ」


「ノオオオオオオオオオ!」


「世話が焼けるのう。ほれ、魔糸ましがマシマシ、ぷちっとな」


 ぶちっ。 どすん。


 コマチ・ネネの魔糸がモッコが変身しているティラノサウルスの尻尾を切断した。


「いってええええええええええええ!」 


 どったん、ばったん、どったん、ばったん


 切り離されたティラノサウルスの尻尾はまるで怒り狂う大蛇だ。ものすごい勢いでビクンビクンと大暴れしている。『お雛様』はその跳ね回る尻尾を興味津々で見つめて、ちょっかいだしては後ずさっている。


 その隙に、モッコは元の姿に戻って尻を抑えながら逃げてきた。


「オレの尻尾おお!」


「しぇからしか! 死ぬよかましたい!」


「あなさまし。大袈裟であるの。かべちょろなら、尻尾なぞまたすぐに生えるであろうに」


「痛いもんは痛いんだよ! それに俺はヤモリじゃねえ!」


「同じようなものじゃ。さて、そろそろわらわの出番かの?」


「おお、ちょうどマジック・泥成土ドロナルドも乾いたころたい」


「ふむ。では、参るぞ。魔糸がマシマシ、大傀儡舞だいくぐつまい!」


 アラクネの女王コマチ・ネネが両手を高々と差し上げた。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


 ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン、


 ゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴンゴン


 ものすごい地響きを立てて、コマチ・ネネが魔糸を操りヨーイドンが作成したコンクリート材を組み上げていく。


 ご、ごげ?


 あっけにとられてくちばしをポカーンとあけたままの『お雛様』が見上げる視線の先に、身長およそ30メートルの太った巨大ゴーレムが現れた。


「ゆくのじゃ、ジャイアン・ゴーレム! 『お雛様』を捕まえるのじゃ!」


 ま゛っ!


 巨大ゴーレムは前かがみになって、恐怖で動けなくなった『お雛様』を抱き上げた。


「身柄確保じゃあ!」


「ほいじゃあ、暴れないように普通のオッジ・サンダー⚡」


 ヨーイドン王子が頭上で二つの金槌を2度軽くぶつけて雷撃を作り、それをゴーレムの魔糸経由で『お雛様』に流した。


 ゴゲエエーッ!


『お雛様』は失神して動かなくなった。


「あとはおいたちみんなで、『お雛様』と従魔契約をするばい」


「序列はどうすんだ?」


「きまっておろう。功労者順じゃ。第1位が妾で、第2位がヨーイドン。囮で逃げ回ってただけのモッコは第3位であろう」


「高齢者順じゃないのか?」


「かべちょろはおのれ身体からだを使ってわらわ達磨だるま落としをさせたいらしいのう」


「モッコはほんとにバカたい」


「う、うそです! なんでもありません! おっしゃる通りで結構でございます!」


「いとよろし」


 こうしてA級冒険者パーティーQPsの面々は、モッコの尻尾(再生可能)という犠牲を払いつつも、無事『お雛様』と従魔契約を結びテイムできたのだった。


 だが、この後に起こる大問題には誰も気づいていなかった。











 おまけ


「ところでモッコよ。お主の尻尾、コカトリスのナゲットといっしょに妾の収納すとれーじに保管しておるのじゃが返して欲しいかえ?」


「いらねえよ! そんなモノ!」


「左様か。もったいないのう、要らぬならわらわもらうぞ」


「おいも欲しかと。ドラゴニュートの革はよか防具になるとよ。それに尻尾の肉も食えるんじゃなかと?」


「食えないから! 俺の肉には毒があって食えないから! 仲間を食料にするんじゃない!」


「使えん奴たい。ならば皮だけ貰うたい」


「妾は先っちょだけ頂くぞよ」


「コマチ姐さん、なにに使うんだ?」


「あのビクンビクンの具合が妾に丁度よさげでのう」


「俺の尻尾をなにに使う気なんだよお!」


「閧ゥ縺ョ繝槭ャ繧オ繝シ繧ク縺倥c縺鯉シ」


「文字化けしたー!」


「ふう。モッコは考え過ぎたい」



『おひなさまクエスト3。『お雛様』の罠』につづく

https://kakuyomu.jp/works/16818622170762840820/episodes/16818622170762998211




おまけのおまけ


ヨーイドンのイラストはコチラ

https://kakuyomu.jp/users/TokiYorinori/news/16818622170455557686


モッコのイラストはコチラ

https://kakuyomu.jp/users/TokiYorinori/news/16818622170518015585


コマチ・ネネのイラストはコチラ

https://kakuyomu.jp/users/TokiYorinori/news/16818622170664038837


お雛様とティラノサウルスとゴーレムの大きさの比較イラストはこちら

https://kakuyomu.jp/users/TokiYorinori/news/16818622170711300780

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おひなさまクエスト2。ドラゴンへの凸凹道 土岐三郎頼芸(ときさぶろうよりのり) @TokiYorinori

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