第12話 私が私であるために

教室には誰もいなかった。

学校中を探し回ったが見当たらなかった。

再び教室に戻る。

いたのは優子だった。

「いないんだ。」

「…。」

「ねぇ。賭けをしようよ。今日中に今日のこと片を付けて。出来なかったら私と付き合って。」

「それはさっき―――。」

「分かってる。フラれたってことは分かってる。でも私は諦められない。チャンスがあるならしがみつくよ。倒れるなら前のめりよ。」

「結構熱血タイプなんだ。」

「そうそう。それに付き合ってから芽生える愛ってのもあるしさ。なくとも快楽で堕とすつもり。」

「…。わかった。」

「じゃあ次の行き先にいなかったら、…ね。」

私は天井を見て目を閉じる。

自分に言い聞かせる。


覚悟…か。


南場の言っていたことが分かったよ。嘘と覚悟ね。

もう優子に嘘はついていないし、これで決着できなければ覚悟を決めよう。

そうだ。優子はチャンスをくれているんだ。

私にいつまでもうだうだやるなとそう言っているんだ。

わかったよ。

私は覚悟を決める。


私が思っていること全部ぶつける。

私の気持ちを解放する。

そうだ。私は嘘をついていた。

私は優子も眞百合も好き。

どっちも好きだ。でもそれは嘘。

もう決まってた。もう知ってた。知らないふりをしていた。

私が今…好きなのは眞百合だ。

そこは揺るがない。揺るぎようのない事実だ。

優子の好きより眞百合の好きが勝っている。

それだけは事実なのだ。

私が私であるために…それを伝える。

それが覚悟ってものだ。

…。

優子。ゴメンけど今の私は付き合うつもりはない。

それは優子も分かっているだろう。

それでもあきらめないのであれば、私を振り向かせてみせて。

可能性はない訳じゃないから。

でも今は眞百合だ。眞百合…。


ゆっくりと目を開けると教室の天井が視界に入る。

あのうようよした模様…たしか調べたことがある。

トラバーチン模様だとかなんとか。よく天井についてるんだよな。

学校の至る所に…。至る所に…。

天井…天。


頭に一筋の光が走る。

ハッとした私は走る。後ろで『どうしたのッ』と優子が言っているが足が止まらない。教室を出て階段を上る。

もう止まることなく階段を上る。たとえ立ち入り禁止だという注意書きがあろうが関係ない。私はその注意書きを無視してその先へ行く。


そこは屋上だった。


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