第11話 私は真実に気づく
優子と一緒に逃げた先は校舎裏だった。
ここまでくれば話し合いが出来る。そう思って連れてきたのだが走りすぎて息が出来なくなっていた。
息を切らし、膝に手を付けて休憩していると、優子が私の肩を掴んで校舎の壁に私を押さえつけた。
「もう手加減しないって言ったから。なのに私を連れてきた…百合が悪いんだから。」
そういって優子は私にキスをしてきた。
人の好意は素直に嬉しい。
親友の好意なんてもっとうれしい。
そうに決まっている。
私は優子のキスに無抵抗にしていると優子は舌を入れてきた。
気持ちいい。快楽からか優子に対して劣情を催す。だが同時にだんだんと罪悪感に苛まれ始める。そして目を瞑りながらキスをしていると不意に笑顔の優子が重い浮かんだ。
優子は親友だ。
その親友とキス…?
私が優子といたいのはこういうことをするため?
でも優子は私の初恋相手。
ならいいじゃないか。好きだった人とのキス。
好き…だった。
なんで過去形なんだろう。
私の好きが今は眞百合に向いているから?
そもそもなんで私はそんなに好きに鈍感だったんだろうか。
私を護ってくれた優子を好きになるのなんて自然なことなはずでは?
…。
そうだ。違うよ。
私はこんな恥ずかしい感情を優子に向けたくないよ。
優子には友情や恋愛感情の前にまず優子に対して尊敬の気持ちが強いんだ。
感謝であったりかっこいいと思ったり、そこから友情や恋愛感情に向かって行ったのだ。遡ると原点は尊敬なのだ。
好きだけど…
尊敬している優子にそんな破廉恥なことしたくない。
恋愛感情はあったのかもしれないけど…その好きは…。
今行っている行為。
その先にあるもの。
それを想像した時、私の脳は勢いよくクールダウンする。
ぴちゃぴちゃと口元で唾が混ざる音がする。
私はゆっくりと優子の肩を持ちながら優子を離す。
「百合…。」
「ゴメン。優子。私…優子のこと好きだけど…優子の好きとちょっと違うみたい。」
「———ッ。でも!」
「その先を想像した時、優子の姿を見たくなかった。優子は優子でいてほしい。私の優子に対する好意はプラトニックなものだもの。こういうキスは優子としたくない。」
「…。」
「優子とは親友でいたいの。」
「プ…プラトニックラブって言葉があるじゃない。…それじゃだめなの?」
「だめだよ。確かに優子のこと好きよ。でもそれは憧れ。私は優子に対して一番は尊敬が出る。感謝が出る。それは…ラブじゃない。ライクなのよ。なにより優子をがっかりさせたくない。」
「そんなっ。百合のことでがっかりすることなんて…。」
私はゆっくり首を振る。
「私の我儘。優子とはこういうエッチなことしたくないの。私のエッチな姿、見せたくないの。そういう肉体的な関係になりたくない。だから…」
「…。」
「だから…ゴメン。優子とは付き合えない。」
ごめんね。私は優子を抱いた。抱きしめた。
優子は私の肩の中でわんわんと泣いた。
×××
「でもさ。百合の言うことは友達同士でのキスは嫌だってことじゃない。あいつとしてたじゃない。」
「そうなんだよね。」
私と優子は肩を並べてなぜか校舎裏にあるベンチに腰掛けていた。
「…あいつのこと好きなんだ。」
「…バレた?」
「バレバレ。」
優子の目元は赤く腫れている。少々後ろめたいが…こればかりはどうしようもない。
「ねぇ…ちなみに私があそこで舌を入れないキスしてたらどうだったの。」
優子の問いはあまりにも突発だったので吹き出す。
「はっ? 何聞いてんの。」
「だって百合私のこと好きだけどエッチはしたくなって言ってた。私、初めてこういうキスしたし…キス自体初めてだけど…とにかく、どうなの。」
「ま、まぁそうね。優子選択ミスったかもね。気付いちゃったもん。優子とのエッチはなんか違うかもって。」
「…くっ。」
「い、いやあれよ。嬉しいんだよ? 嬉しいんだけど…こう、親友だし、尊敬してるし…なんていうのかな恥ずかしすぎるっていうか。」
「肉体関係の友人関係もある。」
「へ?」
「そうよ。セフレだってある。創作物にはセフレから始まる恋もある。そうよ終わりじゃないわ。むしろ始まりなのよ。」
優子が壊れた。
「ちょっと? 聞いてる?」
「もうこうなったらやけよ。あんたとあのギャルがどうなろうが知ったこっちゃないわ。勝手に付き合うなりちちくりあうなりすればいいわ。私は私であんたを誘惑しまくるんだから。言っとくけどね、百合。私を拒否する直前まで百合の顔、恍惚にみちたかなりエッチな顔だったかんね。これは快楽に弱いと見たわ。もうやけよ。」
優子が私の額にキスをしてきた。
不意のことで私は顔が赤くなる。
額を両手で押さえて距離を取る。
「ちょっとやめてよ。」
「ふん。過激なエッチは控えてあげるけど、これから先はこういうことしまくるんだから気を付けてよね。」
私の優子が壊れた。いや、仲が一番よかったあの頃に戻ったのか。
分からないが…なんか、吹っ切れたのか。
「それと、別に敵に塩を送るて訳じゃないけど…あのギャル。手ごわいわよ。」
「分かってる。」
眞百合の気持ち。
それはまだ分からないが…でもさっきの修羅場での出来事から分かったことがある。
眞百合は友人関係に固執している。
優子はそのまま走って帰った。
一緒に帰ろうと声をかけようとしたが…今は一人にした方がいいのかもしれないと思い、私は教室に戻った。
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