第7話 私は一人になる
優子との出会いは小学校のころだった。
私は活発な子だった。
幼稚園組がそのまま小学校へ行く形で数人知った顔がいた。
その一人にいじめっ子キャラの
ある日、南場は私の正義感を煽って一人の女の子を人質にとる。
「おーほっほっほ。この子のメガネがお陀仏になりたくなければ私の言うことを聞きなさい。」
「…ちっ。」
小学生の喧嘩など小さなことだ。だけど、物が絡んでくると話は変わる。それは親が買ったものであり、使っているのは子どもでも所有者は保護者だからだ。南場がそのことに気付いているのかは怪しいが、誤って壊したりしてしまったら面倒なことになる。私は黙って難波の言うことを聞いた。
その日から難波は調子に乗り出した。私より優位に立つために例のメガネ少女を盾にしだしたのだ。それこそが花園優子だ。
事あるごとに優子を盾に私にちょっかいをかける。
服を取られたり、靴を汚されたり、教科書を破られたり。でもへっちゃらだった。
なぜなら南場のいじめ方法は少し特殊でその後補償があるからだ。全て買ってくれるのだ。しかも値段がいい奴を。うちとしてはラッキーだったのでなんとも言えないでいた。ある意味では精神的苦痛を与えたいだけしか考えていないのかもしれない。
金持ちのすることにいちいち考えてられない私は見過ごしていた。
そうだ。なんだかんだ南場は暴力を振るわなかった。
暴力を振るうのはいつも私の方だ。力関係では私の方が上だったのだ。
それを知っているからこその南場のやり方だったのかもしれない。
喧嘩になる度教師にこっぴどく叱られるのだった。いつの間にかクラス内では喧嘩を売る南場とそれを買う私、そして人質の優子と人質を庇って喧嘩する二人を説教する先生というお決まりのパターンが出来るほどだった。
「恩納さんってすごいね。」
「私? すごくないよ。普通だよ。」
「すごいよ。立ち向けっていけるってすごいよ。勇者みたい。」
「えぇ。私もっとかわいいのがいいな。」
「え、お姫様?」
「いや、お姫様は花園さんのほうでしょ。いつも南場にしてやられてるし。」
「う、うん。だって南場さん怖いんだもん。」
「あんなの大したことないよ。親がすっごいだけで本人はただの子どもだってこと分かってないおバカさんなんだから。」
「ちょ、そんなこといったら南場さん怒るよ。」
「本当のことだもん。それで怒るのは図星ってことでしょ。」
「…怖いもの知らずだね。恩納さん。」
「あ、それ。」
「え?」
「私のこと百合ってよんで。そっちの方がかわいいもん。」
「あ、うん。じゃあ私のことも優子って呼んでよ。」
「わかったよ。優子。」
そんな会話をした日のこと。
昼休みにまたまた南場が優子を人質にしてきた。
「いいかげんにしろよ。南場。」
私が口調を荒げると南場は
「威張ったって無駄ですわ。今日こそ私が上だと分からせてやりますの。」
「無駄なことを。」
いつも通りの会話だった。
いつも通りになるはずだった。
「わ、私も百合の言う通りだと思う。」
優子が口を開いた。
これはいつもと違う展開だった。
「人質は黙ってなさい。あなたはこれからみじめな姿に…。」
「南場さんなんて大したことないよ。百合の言う通りだよ。親の威を借る狐だよ。」
先ほどの会話をまんま使った。
あちゃーと私は笑いをこらえていた。
どうなるんだろうと南場の方をみると、それはもう形相が鬼のようで今にも噴火する火山のような有様だった。
「なんですって。このっ…」
「怒るってことは図星なんだ。」
優子が煽る。おいおいよくないよ。自分の力量がわかってから煽るもんだよ。
まるで知識を言いふらしたくてたまらない子どものように受け売りをそのままべらべらと話す。まぁ小学生だしこういうもんだよ。当時の私も優子も幼いんだ。仕方ない。
「調子に乗って――――ッ。」
優子の前髪を引っ張る南場。そのままビンタ。優子はビンタされて倒れる。
それは初めて南場が手を挙げた瞬間だった。
それを見た瞬間に私は怒りと落胆が渦巻き衝動的に南場を殴りにかかった。
南場はというと自身の行いにビックリしていたようでおどおどしていた。そのまま右頬にぐーぱんを入れ倒れた南場い馬乗りしてひたすらに殴り続けた。
先生がすぐに駆け付けてきて馬乗りで殴り続けたのは十秒前後と短い時間だったがかなりの攻撃に南場は血だらけになっていた。
私の拳は少し血が着いていた。
周りの小学生はビビっていた。
ふんっと強がって見せる。そのまま私は先生に連れていかれるのだった。
結局、南場は大きな怪我はなく骨折もなくただ鼻血を出した程度だったみたいで私と南場そして学校側も大事にはしたくないと話し合いでことは片付けられた。
だが、そんな簡単に片付く一件ではなかった。
今回はやりすぎたのだ。
私が。
私は孤立した。
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