第2話笑顔

 タカちゃんはサッカーが、したくてしたくてたまりません。

 でもまだタカちゃんは小さくて、町のサッカーチームに入れてもらえませんでした。

するとある日、タカちゃんは、ぼくをサッカーボールにしてしまいました。

部屋のかべにゴールの線を書いて、ぽくをおもいっきりそのかべにけるのです。

 突然のことだったので、ぼくは目がとびでそうにいたかったことを、いまでもよくおぼえています。

それでも、タカちゃんがぼくとあそんでくれることが、少しうれしかったこともよくおぼえています。

 でも、タカちゃんのサッカーはますますはげしくなっていきました。

 ぼくはお店にいたころのことを思い出しました。

 ぼくよりもずっと前からお店にいた、ブタのぬいぐるみのいっていたことが、いまはっきりとわかりました。

 ぬいぐるみはやっぱり、男の子より、女の子にかってもらわないと、たいへんなことになるらしいと、いつもいっていたことを。


 そんな感じの毎日がすぎ、タカちゃんは元気で明るい子になっていきました。

 ぼくは元気なタカちゃんが大好きでした。

 タカちゃんはどんどん大きくなって、小学三年生になったとき、町のサッカーチームに入ることができました。

 タカちゃんは、毎日いっしょうけんめい練習しました。


 タカちゃんが町のサッカーチームに入ってしばらくたったある日のこと、タカちゃんはぼくをひざのうえにかかえ、何かつぶやきながらぼくの頭をぬらしていました。

ぼくはタカちゃんに何があったのか、わかりません。

ぼくはとてもかなしい気持ちになりました。

翌日、タカちゃんは、突然ぼくをおふろばにつれて行き、ぼくに洗剤をつけて、ごしごしとあらうのでした。

しかし、タカちゃんのお家に来てはじめてのこと、ぼくはたいへんよごれていて、なかなかキレイになりません。

でも、タカちゃんはあきらめません。

何回も水でながしては、洗剤をつけてごしごしをくりかえします。

そして、ぼくを洗濯機の中にほうりこんでしまいました。

ぼくはぐるぐる目がまわりました。


 気がついたときには、大きな洗濯バサミで、お庭の棒につりさげられていました。

 となりには、タカちゃんのサッカーのユニホームがありました。

水にぬれたぼくは、たいへんおもくなっていたので、落ちるのではないかとハラハラしていました。

 お昼前につりさげられていたぼくは、日がしずみ、お月さまとお星さまがくっきりと見えたころ、棒からおろされました。


 タカちゃんは、きれいになったぼくをみて、とても喜んでくれました。

 ぼくはうれしくなりました。

 ぼくはタカちゃんのお家に来てほんとうによかったと思いました。








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コロンタ フシ @mizuiri

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