コロンタ

フシ

第1話コロンタ

 ぼくはクマのぬいぐるみ、なまえはコロンタ 、なまえをつけてくれたのは、タカちゃん。

 タカちゃんのお家に来たのは、いまから五年前。


 その前は、町のまん中にある、丸太をくみあわせてできたお店に、ぼくはいた。

 お店の中は黄色のランプがついていた。

 ランプのあかりが良く見える場所は、ぼくのお気に入りだった。

 でも、ぬいぐるみがへるのより、ふえるのがはやかったので、いつの間にかぼくは、はしっこの方で、人気もののコアラの下になっていた。

 そんなぼくを見つけてくれたタカちゃんには、とてもかんしゃしている。

 クマのぬいぐるみといえば、有名なテディバアとか、はちみつのすきなクマのオナラみたいな人気ものもいるが、ぼくは店主の知り合いの自称アーチストの、最初で最後の一点ものらしい。

 だからぼくは、お店の中ではまわりの量産タイプのぬいぐるみとは違って、ちょっとお値段が高めだったので、セレブのお嬢ちゃんの目にとまれば……いつの日か、なんて噂されていたが、いつの間にか割引シールがはられていた。

 でも、タカちゃんとタカちゃんのお兄ちゃんは、ぼくが一番かっこいいといってくれた。

ぼくがタカちゃんのお家に来てすぐのころは、とてもかわいがってくれて、眠るときはいつもタカちゃんのとなりだった。

 でもタカちゃんが、小学生に早くなりたがっていたころ、タカちゃんのとなりにはランドセルがやってきた。

 ぼくは 部屋の片隅に立てかけある、一輪車のうえにいることが長くなった。

 ちょっとさみしくて、泣きそうになった日もあった。

 しかしそれは、嵐の前のしずかさというものだった。


 タカちゃんのお兄ちゃんがプロレスにむちゅうになり、ぼくはいろいろな技をかけられたのだ。

 うでをぼくの頭にまきつけてぐりぐりしたり、お兄ちゃんの足のまたにはさんで、頭から床におとしたり、おぼえたばかりの技を、

ぼくでためすのだった。

 ぼくはタカちゃんのお兄ちゃんに見つからないように、タカちゃんがかくしてくれればいいのにと思いました。

 でもタカちゃんは、ぼくに無関心になっていました。

 ぼくはちょっとさみしい気持ちになりました。

 しかしそれは、さらに大きな嵐の前の、小さなできごとにすぎなかったのです。




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