ひなまつり
崔 梨遙(再)
1話完結:約1000字
「なあ、ええやんか」
「ダメよ、そんなの」
「なんで? なんでなん?」
「なんで? と言われても、“私が嫌だから”としか答えようがないんだけど」
「3月3日やで! 『ひなまつり』やで!」
「だから何?」
「『ひなまつり』の日に初めて結ばれたら、強く記憶に残るで。きっと毎年、この日を忘れないと思うねん。おぼえやすいから」
「『ひなまつり』は関係無いと思うんだけど」
「なあ、お前、処女やろ?」
「うわ! 今なんて言ったの? この男」
「処女、卒業したいたろ?」
「うわぁ、助平(すけべい)って本当に最悪」
「僕だって童貞を卒業したいんや」
「じゃあ、私以外の女の子としたらいいじゃん」
「いやいや、やっぱりここは聖子の出番やろ」
「なんで? 全く意味がわからないんだけど」
「だって、聖子と僕は同じ日に生まれたし」
「だから何?」
「家が隣同士だし」
「それで?」
「幼稚園の頃から一緒に通っていたし」
「それで?」
「ずっと一緒に登校も下校もしてたし」
「それで?」
「この幼馴染みパターン、普通、お互いにお互いを好きなはずやろ?」
「そんなの、漫画とかドラマの話よ」
「僕は聖子が好きや!」
「私は助平のことあんまり好きじゃない」
「なんで? 僕のどこが気に入らへんの?」
「うーん、まず顔」
「僕の顔のどこが気に入らへんの?」
「具体的なことは言わない。言ったら私が嫌な女みたいだから」
「他には? 他にも嫌なところがあるんか?」
「うん、性格とか、いろいろ。外見も内面も好きじゃない」
「えー! そんなのおかしいで、ここは相思相愛で育つはずやで」
「おかしくないのよ、これが普通なの。家が隣とか誕生日が同じって、ただの偶然じゃない」
「でも、学校でもよく僕と話すやんか」
「ああ、私は太志君のことが好きだから」
「太志って、僕の親友やんか! そうか、それで僕達の会話に入っていたのか」
「そういうこと。現実って、こんなものよ」
「嘘や-! これが漫画なら! アニメなら! ゲームなら-!」
「助平、この前言ってたよね、痴漢の被害にあってた女の子を助けたらお礼を言われて、女の子に連絡先を書いた紙を渡したって」
「それがどないしたんや?」
「連絡はあった?」
「う!」
「連絡が無いんでしょう? これが現実というものよ」
「これが漫画なら、アニメなら、ゲームなら……」
「学校に遅れるわよ、動かないのなら私は先に行くね」
こうして少年は現実というものを知り、大人になっていくのだった。
ひなまつり 崔 梨遙(再) @sairiyousai
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