第4話
本当にちゃんと調べたのか?
祥子は秋津刑事に問い正そうとしたが、何故かその調べに間違いはあるまいという不思議な確信があった。
祥子は聞いた。
「辻家に岡野さんと同い年くらいの人はいないの?」
「三十一年前に、辻
「たかなおさんね。どういう字?」
祥子は調査ファイルの関係者一覧に、辻高尚の名前を追記した。
それが隣の岡野夫人の今の名前、岡野菊恵と並んだところを見て、祥子はハッとした。
「秋津君、その辻家に行って高尚のことを聞いて。どんな人だったのか……」
「それが、辻家自体はもう無いんす。高尚は行方不明でその両親の辻夫妻もすでに他界してるとのことで」
祥子のひらめきは疑念の形をとり、ますます大きくなった。
「じゃあ、誰でもいいわ。高尚のことを知っている人を探して。特に、ご両親にどんな育てられ方をされていたかの話を聞いて」
秋津刑事への指示が終わると同時に、車のエンジン音が聞こえてきた。
だがそれは岡野夫人の車ではなく、宅配便のトラックだった。
降りてきた配送員は、祥子を家人と勘違いして「宅配便です」と声をかけてきた。
祥子は警察手帳を見せ事情を説明し、何を届けに来たのか質問した。
「えと……これなんすけど。置き配にしてっていいですかね」
配送員は、トラックから大きな箱を出して玄関先まで運んできた。
ラベルで荷物の内容を確認した祥子は、肩を落とした。
おそらく、考えられる最悪の事態だ
岡野夫人が帰って来るタイミングをはかって、彼女の動きを封じなければならない。
祥子は岡野家から少し離れた角に建つ住宅の生垣に隠れて、夫人の帰りを待った。
待っている間に、秋津刑事から辻高尚についての情報がメールで入ってきた。
やはりそうか……
求めていた答えははっきりと書かれてはいなかったが、そこにつながる手がかりは十分に掴むことができた。
やがて夫人の車が戻り、庭先に入ったところで祥子は動き出した。
荷物を持った夫人が玄関のドアを開けて入ろうとしたところで、声をかける。
「
息を呑んで振り返った岡野夫人の目は、驚きに見開かれていた。
「事情は全てわかりました。恵美ちゃんに会わせてください」
岡野夫人は取り乱した様子で、ドアも閉めないまま足早に屋内へと消えた。
「岡野さん!」
危険を察知した祥子は、夫人を追って玄関をくぐり居間へ直行した。
自分の推理が正しければ、恵美もそこにいるはずだ。
居間に踏み込むと、果たしてひな飾りの前で岡野夫人がこちらを向いて立ち尽くしていた。
手にした包丁の切先を祥子の方へ向けて。
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