第3話 奇跡のカウントダウン
「また当たった……」
スーパーのレジ横にあった抽選くじを引いたら、二等のギフト券が当たった。
昨日は、行列必至のカフェでちょうど一席だけ空いていた。
その前は、欲しかった洋服がセールで半額になっていた。
小さな幸運が、毎日のように続いている。
最初は偶然だと思っていたけれど、こうも続くと、さすがに気づく。
——これは、ただのラッキーじゃない。
「……本当に運って、貯まるものなんだ」
そうつぶやくと、向かいの席でコーヒーを飲んでいた彼は、満足そうに微笑んだ。
「だろ?いい調子だ」
「うん、なんか怖いくらい……」
「怖がることはないさ。むしろ、これはまだ“序章”だよ」
彼はカップをゆっくりと回しながら言う。
「序章?」
「奇跡っていうのは、連鎖するものなんだ。一度流れができると、どんどん加速していく」
「加速……?」
「そう。今の君は、運のカウントダウンが始まったところだよ」
——運のカウントダウン?
なんだか、すごくワクワクする言葉だった。
「じゃあ、この調子でいけば、もっとすごいことが起こるの?」
「そうだな。もうすぐ“転機”が訪れる」
「転機?」
「今までの君だったら、選ばなかったような選択肢が目の前に現れる。その時、どうするかで未来が決まる」
「え……?」
まるで予言みたいなことを言う彼に、私は思わず見入ってしまった。
彼は私の視線を受け止めながら、ふっと小さく笑う。
「まあ、今は気にしなくていい。運の流れを楽しんでおけばいいさ」
確かに、運の流れは止まらなかった。
道を歩いていたら、久しぶりに会いたいと思っていた人とばったり会う。
電車の中で、ずっと探していた本を読んでいる人がいて、タイトルを知ることができた。
友人の紹介で、新しい仕事のチャンスをもらう——。
すべてが、まるで“導かれている”ように、スムーズに繋がっていく。
でも、それと同時に、私は気になっていた。
最近の彼の視線が、どこか切なげだということに——。
「ねえ……何か、隠してる?」
そう聞こうとした瞬間——。
「おっと、ここでそろそろ時間切れかな」
彼は時計をちらりと見て、立ち上がる。
「え?時間切れって——」
「次の奇跡が、もうすぐ来るよ」
私の言葉を遮るように、彼はにっこりと微笑んだ。
「え、ちょっと待って……!」
私は慌てて立ち上がる。
けれど、その瞬間——。
スマートフォンの着信音が鳴った。
画面を見ると、そこには想像もしなかった相手の名前が表示されていた——。
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