第4話 亡者騎士

ガウデリウスは、目の前の異形の騎士を睨みつけた。腐敗した甲冑の隙間から黒い霧が漏れ、胸の穴からはさまよう霊が這い出している。


「……貴様は何者だ?」


声を絞り出しながらも、ガウデリウスは剣を構えた。だが、相手は応えず、大剣をゆっくりと持ち上げた。


「汝、生者なり……ならば、試練を受けよ」


次の瞬間、亡者の騎士は大剣を振り下ろした。


「くっ……!」


ガウデリウスはとっさに横へ飛び、かろうじて直撃を避けた。しかし、大剣が床を叩くと、衝撃で石片が飛び散る。その威力に息をのむ間もなく、騎士は再び刃を振り上げた。


(まともに喰らえば即死だ……!)


だが、逃げることもできない。ここで退けば、また審問官たちに追いつかれる。


「なら……戦うしかない!」


ガウデリウスは剣を握りしめ、亡者騎士へと突進した。


大剣が振り下ろされる。彼はそれを寸前でかわし、騎士の脇腹へと斬りつけた。しかし、剣は甲冑をかすめるだけで、致命傷にはならない。


(やはり並の攻撃は通らない……!)


すると、騎士の動きが一瞬止まった。


「銀……その指輪……」


低くくぐもった声が響く。


ガウデリウスは驚きながらも、自らの手にある銀の指輪を見た。公爵が残したこの指輪が、なぜこの亡者を動揺させるのか……?


「汝、その指輪を……どこで……」


騎士は剣を引き、怨念のこもった眼でガウデリウスを見据えた。


ガウデリウスは息を整えながら、わずかに剣を下ろす。


彼の旅路は、新たな謎へと踏み込んでいく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る