第3話 墓所の影
ガウデリウスは、呪忌の森の奥へと駆けた。霧はますます濃くなり、足元には朽ちた剣や砕けた骨が散乱している。先ほどの骸骨たちはまだ背後で暴れているのか、時折、金属がぶつかる甲高い音と、不気味なうめき声が聞こえた。
(このままではまた追いつかれる……どこか、隠れられる場所を探さなければ)
荒れ果てた獣道を進むと、やがて古びた石造りの門が現れた。崩れかけたアーチには、読めぬ古代文字が刻まれている。
「……墓所か」
この呪忌の森には、戦で散った無念の魂が眠るという。だが、その霊は決して安らかではない。
(審問官よりは、幽鬼のほうがまだマシか……)
そう考え、ガウデリウスは門をくぐる。中は冷気に満ち、かすかに燭台の明かりが揺れていた。
「──我が眠りを妨げる者よ」
突如、墓所の奥から重々しい声が響いた。ガウデリウスは剣を構え、ゆっくりと後ずさる。
そこにいたのは、黒い霧を纏う巨大な影。腐敗した甲冑をまとい、錆びついた大剣を引きずる異形の騎士だった。その胸部にはぽっかりと大きな穴が開いており、そこから無数の霊が這い出している。
「汝……まだ生者か」
ガウデリウスは震える手で銀の指輪を握りしめた。
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