第13話

僕が死んで、5日目。

最終日。

僕は今日、死んだ理由を語る。

そして最後の審判を受ける。

僕はこれからどこに行くのか、それが決められる。

天国か、地獄か。

それともー。


「死んだ理由は分かったのか?」

「はい、分かりました。それは…。」

「いい。ここでは話さなくていい。君に最後の時間をあげよう。」

「最後の時間…?」

「あぁ、そうだ。君が生きていた時間に1つ贈り物をすることを認めてやる。」


それは、手紙でもなにかの作品でもなんでもいいと言われた。

僕が伝えたいことがあれば、それを過去に残してこい、と。

僕は、必死で伝えたいことを考えた。

手紙を書くなら何を書こうか。

「ありがとう」とか「ごめんね」とかだろうか。

「愛してくれてありがとう」とか。「僕も愛してます。」とかそんな言葉だろうか。

どれもなんだか安っぽく感じた。

だって、それは生きている間に言わなきゃいけない言葉だったからだ。

死んでしまった今に、そんなことを言うのはもう遅い。

こんなときに出てくる言葉は、いつでも言えるはずの言葉ばかりだった。

言えるのに言わないで来た言葉だった。


僕の周りの人が自分を責めないように、これからちゃんと幸せになってくれるように。

僕は何か言葉を探した。

だけど、見つからなかった。

だから、僕は必死で祈った。

僕の周りの人が僕の死を乗り超えて幸せになりますように、と。


生きている間は自分のことばかりだった。

だから、最後はせめて、と過去の自分に1枚のカードを渡すことに決めた。


こうして、僕の命は消えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る