第12話

あの日、部屋を飛び出した僕は気付かぬうちにキャンプ場に向かっていた。


楽しかった頃のことを思い出せば、なにかが変わると思った。


なのに、ついてみたら余計苦しくなった。

こんなにもたくさんの愛をもらってきたのに、何も返せない自分が情けなかった。


その時、雨が降り始めた。

雨は短時間のうちに一気に強くなった。


気づいたら僕は川の中にいた。

美咲が後を追ってきていても、僕は構わず前に進んだ。


誰もわかってくれない、と世界でたった1人でいる気分になった。


だけど、今なら分かる。

僕は自分勝手だった。

1人で苦しんで、悩んでる方が楽だったから、誰かに相談もせずに1人でいた。

僕は、僕自身とも勉強とも向き合うことから逃げた。

かわいそうだと言う言葉に甘えて楽をした。


助けてって言えば、助けてくれる人はたくさんいた。

本音でぶつかれば、分かってくれる人は僕のそばにいた。


どうして、今なんだ。

なんで今まで気づかなかったんだ。

後悔してもしきれなかった。


僕は今まで、神様にお願いすればなんでも叶うもんだと思っていた。

思い通りにいかないもどかしさを知らなかったし

今までは困ったら誰かが助けてくれた。


だけど、現実はそんなに甘くなかった。

後悔しても、決して時間を戻すことは出来ないし、


僕の魂は明日で消えてしまう。


時間の針がこんなにも残酷なんて僕は今まで知らなかった。

知らなくても生きていけるほど、周りに支えられていた。

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