4日目

第8話

僕が死んで4日目。


僕が暮らしていた家につく。

「ただいま」という声は誰にも届かないし、「おかえり」だって返ってこない。


玄関の先のリビングに行くと、そこには僕の祭壇があった。

僕の遺影が飾ってあった。


「この写真…、見つけてくれたんだ。」


美咲に撮ってもらって、密かに大事にしていたこの写真。

見つけたのは、弟の綾人だろうか。

綾人はいつもぼくの部屋に居座っていた。僕が邪魔だと追出してもその数分後にはまた僕の部屋にいた。

綾人のことだから、僕が大切なものをどこに隠しているか、ぜんぶお見通しなんだろう。

それで、見つけてくれて飾ってくれているんだ。


この写真を撮った次の日、僕は先輩に告白しようと決めていた。

これは僕の勝負服だった。

美咲が選んでくれて、写真をとってくれた。


「ほら、駿太。もっと自然に笑ってよ。」 


美咲はカメラのレンズを覗きながらそういった。


「自然にって言われても、困る。」


僕は僕の笑顔に自信もなかったし、写真だってその時の僕は撮りたくなかった。


「ほら、もっと自信持って!」

「無理だよ、僕なんか。やっぱり告白なんてやめようかな。」

「何言ってるの!大丈夫だって!!」


美咲は、ほら前向いてって、僕に笑いかけた。


「美咲はさ、どうしてそんなに前ばっか向いてられるの?落ち込んだりしないの?」

「私だって、落ち込むことあるよ。けど、駿太の前で落ち込んじゃうと、お葬式みたいになっちゃうじゃん。駿太、暗いし。」

「なんだよ、それ。」

「バランス取ってるんだよ、私なりに。ほら、撮るよ!笑って!!」


美咲は、泣かなかった。

僕の前では絶対に泣かなかった。

だけど、あの日は違った。

二人で水に呑まれながら、美咲は泣いていた。

僕が最後に見たのは、美咲の涙だった。

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