第5話
僕は、おじさんに付いて再び病院の中に戻った。
次は、入院病棟。
中高生から大人が病気や怪我で入院している。
「お前、なんで死んだ?」
「自殺したんです。」
「そうじゃない、おれは理由を聞いとる。なんで死ぬことにしたんだ、と。」
「それが分からないから、ここにいるんじゃないですか。」
「ほんとうか?本当に分かんないのか?」
そうやって、改めて問いかけられると返事に困る。
たしかに僕が死んでからの2日間、真剣に考えてはなかったかもしれない。
なぜ、死んだのか。
思い出すのが怖くて知らずしらずのうちに、考えることをやめてしまっていた。
「誰からも大切にしてもらえなかったからじゃないですか。だから、僕は死んだんですよ。」
僕の人生最後の1日に感じた孤独や淋しさが一気に押し寄せてきそうだった。
そうだ、僕は誰にも必要とされてなかった。
誰からもわかってもらえてなかった。だから、死んだんだ。
「ここの通路をまっすぐ進め。端から3番目の病室だ。」
「そこに、何があるんですか?」
「いいから、行け。そして今度はもう逃げるな。ちゃんと見るんだ、お前の目で。」
僕は、ゆっくりとおじさんの言う病室に向かった。
途中で一度振り返ったが、おじさんはもうそこにはいなかった。
端から3番目。僕が今いるところから6番目の病室。
1つ1つその部屋へと近づくたびに、不安や緊張で足がすくんだ。
それでも、僕は進んだ。
あの日と同じだった。
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