第3話
「だったら、その体俺にくれよ。」
男性が急に立ち上がり僕を掴んで訴える。
「いらないんだろ??だったらくれよ!!俺に…俺に健康な体をくれよ…!!言ったよな?おれ、子供生まれるんだよ。男の子。これからやりたいことたくさんあるんだよ!キャッチボールとか、サッカーとか!!」
男性の目が必死に僕に訴える。
「くれよ、その体!!」
「やめてください、離してください…!!!」
僕は必死に男性に言った。
そしたら、男性ははっと我に返ってごめん、と謝った。
「妻が妊娠中、電車に乗ったんだ。お腹だってもうだいぶ大きかった。それなのにさ、それなのに、誰も席を譲らないんだよ。妻は揺れる車内でずっと立つしかなかった。そんな妻を見て、知らないおじさんが言うんだよ、妊娠は電車に乗るなって。仕方ないんだ、妻は免許を持ってなかった。僕が取らなくていいって言ったんだ、病院にも検査にも僕が車で送っていくから大丈夫だって。それなのにさ、僕死んじゃったんだよ。」
「ほんと情けないよな」と、男性はうつむいたまま言った。
「そんな世界にさ、妻と子供だけで置いとくわけにはいかねぇだろ?俺がいなきゃ、そばにいてやんなきゃ駄目なんだよ。」
誰も、助けてなんかくれないんだよ。
と、男性はそう言った。
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