1日目
第2話
僕が死んで1日目。
僕は今日色んな人の最後が集まる場所、病院に行ってみることにした。
新たな命が生まれ、そしてまた消えていく。
病院で生まれて、病院で死んでいく。僕もそうだった。
僕は何かヒントを探すために病院内を回ることにした。
まずは、産婦人科。
命のスタート地点。
ベビーベットにスヤスヤと眠る赤ん坊を見てるとつくづく思う。
君はまだ気づいてないかもしれないが、今が1番幸せな時期だよ、と。
未来に対する不安なんてものはなく、両親に守られながら安心して眠りにつくことができる。
そんな赤ん坊のときがきっと1番幸せだ。
いつからだろう、僕が未来を信じれなくなったのは、未来に不安をいだき始めたのは。
はじめは、悩みも不安もなかったはずなのに。
手足を伸び縮みさせている赤ん坊を見ていると自然と口元が緩む。
「可愛いですよね、赤ちゃん。」
「え?あっ、はい。」
まさかとは思ったが、その男性はたしかに僕の方を見て、僕に話しかけていた。
「生まれるんですよ、僕の子供も、もうすぐ。」
男性はそう言って嬉しそうに赤ん坊を眺めた。
「あのー…。」
「会いたいな、息子に。会えませんけど。」
「ってことは、やっぱり」
「はい、もう死んでます。」
「そうですか。僕もです。」
「よかったら少し話しませんか?」
そういう男性について、僕は病院の中庭にあるベンチに座った。
「僕、癌だったんです。それで。」
男性は悲しそうにいった。
そして、「最近多いですもんね、」と無理に笑った。
それから男性の話をしばらく聞いた。
家族のこと、親友のこと、そして死ぬ瞬間のこと。
一通り話を聞いて、最後に男性は僕に
「君はどうして死んだの?」
と聞いた。
死んだ理由は分からない。だけど、自殺したことは覚えている。
だから僕は、自殺です。と答えた。
「ってことは、君の体はまだ健康なんだね??」
「まぁ、一応‥。」
どういう死に方をしたのかは分からない。
だけど、今の所僕の体に傷一つなかったし、生きてるうちは病気もめったにしなかった。
病院に行くこともほとんどなく生まれたときと、死んだとき。長くいたのはその2回きりだ。
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