第32話

それからずっと長い年月が過ぎた。

私は東京で就職した。


あの日の答えを探しながら。


おやじが教えてくれたこと。

いや、ひなこちゃんがおやじに化けてまで教えたかったこと。

それは、たぶん そのままでいいんだよ ってこと。

だから、今度は過去をなかったことにして幸せになるのはやめて、ちゃんと向き合ってそれを全部ひっくるめて私なんだ、と受け入れて生きていきたいと思った。


過去と向き合うのも、友達を作るのも、必要なのはちょっとの勇気だった。

立ち向かった今ならわかる。

それは、本当にほんの少しの一歩なんだ。


こうして、私なりに過去と向き合うようになった。

そして、奇跡が起こった。


ピローン

ラインが来る。


「私、東京の大学に行くことにした。相当頑張らないといけないけど、1年ほんっきで頑張って、絶対東京いくから待っててね。」


来年、大学を受験するらしい。

だから、決起集会しようと東京の部屋によんだ。


小学生ぶりのお泊まり会だ。


2人でお酒を飲む日が来るなんて、思いもしなかった。


楽しい。幸せ。


って今度は本当に心の底から思った。

次の日の朝、バタバタで会社に行く準備をする。


「勉強机、自由に使ってていいからね。」

「うん、ありがとう。」

「あ、あと今日紹介したい人がいるから。」

「えー、なに彼氏〜?」

「うん、まぁそんなとこ。」


あの時の気になる人とはいまでもつきあっている。

色々支えてくれた運命の人。

その人を紹介できることがこの上なく嬉しい。

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