第2話

律が絵を書いている姿を横目で見ながら律と出会った日のことを思いだす。


「林田、律です。よろしくお願いします。」


教卓の横にたたされ、先生にうながされるまま自己紹介をする転校生。

細くて弱々しい無口な少年だった。



律が転校してきたその日、私はなぜか彼が気になり話しかけた。

彼は指に絆創膏をつけていたので、

なぜ絆創膏をつけているのかだすねると


「絵を書くために鉛筆を削ったら怪我しちゃった。」


と彼は小さな声で答えた。

私は彼が書く絵に興味があった。

なぜかすごく見てみたいと思った。


「どんな絵を書くの?」


と聞くと彼は驚いたような表情をした後

「明日、持ってくるよ。」

と少し嬉しそうに答えてくれた。


次の日、私は律の書いた絵を見た。

初めて見るような絵だった。

私は感動して、その感動を律にどうしても伝えたくて、とにかくすごいね!!と律をほめた。

律は初め少しとまどっていたけど、すぐにすごく嬉しそうな顔をした。

それから律は、新作を書くたびに私に見せてくれるようになった。

それから、私の1番の友達は律になった。

小学校の頃から多くの時間を一緒に過ごし、同じ物を見て大きくなった。

今さら好きになることなんかない、そう思っていたのに。


律は新作の絵を書きあげるたびに強くなっているような気がした。

高校生になる頃には、弱々しい少年だったのが嘘かのように立派な男子になっていた。


律はなかなか人に心を開かない。

そして、なぜか大人を嫌う。

だけど、美術の先生に律は懐いていた。

今までは私に1番に見せてくれてた絵も、美術の先生を経由することが多くなって、私はそれが少し寂しかった。

1度律に美術の先生と仲がいいんだね、と言ってみたことがある。

律は、


「別に。たまたま利害関係が一致しただけだよ。」


となんだかそっけなかった。


利害関係。

律はいつも先生に絵のアドバイスをもらっている。

だけど、私は律の絵を見ても専門的なアドバイスはできない。

でも、律はいつも絵を見せてくれる。

それも律の優しさなのかもしれない。


昨日の夜、律に突然呼び出された。

私は親にバレないようこっそりと家を抜け出す。

ここ数年、この街では行方不明者が続出していて、そのせいで親も門限には厳しくなっていた。

私も夜の外出はちょっと怖かったけど、それよりも律に会いたい気持ちの方がずっと強くて会いに行った。

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