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彼に魅了されたのは、四年前の熱い夏。きっかけは急なことだった。


友人である綾乃が勝手に私の予定を入れたのだ。

それは男性アイドルグループのライブだった。確か中学時代からの友人である彼女は家族全員このグループが大好きだとか、何とか言ってた気がする。最初はアイドルのライブなんかに興味など一つもなかった。それに、



『綾乃さ、うちらもう高3なんだけど』

『だから何?』

『いや、高3の夏なんか、勉強しないと』



受験生の夏だった。私たち通う高校は公立大学進学を志望する生徒が集まる自称進学校、と言われる学校で、夏の講習はそこまできつくないものの、もう二学期にでもなれば進路志望書の内容を確定させなくてはいけない。


もう、自分の未来を決める壁にぶつかる時だった。



『はいー、出た。受験生の使命背負っちゃってる系だ』

『えっ、何それ?いや、綾乃どーすんの。大学』

『えー決めてなーい』



私は地元の下のほうの国立大学の理系部に進むことは考えていた。勉強は好きじゃないほうだが、理系科目はこの学校でも上位に食い込む成績なので進学には少し余裕があった。


一方綾乃は今年の年始に交通事故に合い、運よく進級できたものの、もともと得意でもない学習面で他の人より遅れをとっていた。さらに中学時代から将来の夢にしていた教師になるためには四年制大学進学が必須だ。だが、今の綾乃が四年制大学に進学するには相当な努力が必要だった。



『由結~、お願い。ライブいったら受験勉強頑張るから』

『えっ、本気?』

『もっちろん。一緒に行くよ』



彼女の強引な誘いに戸惑ったが、ライブ後にある夏期講習全日程参加を条件にライブに行く予定を許可した。



綾乃はその約束を決めた後、コツコツ頑張っていた。少し勉強が周りより苦手なだけで、彼女はものすごく努力家で真面目な人だ。この高校に入るためにも人並以上に努力したのだろう。そんな彼女を何も取り柄のない私は尊敬していた。

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