前のエピソード――Prologue

『みんなぁ〜！！』

会場が照明で照らされ、サイリウムの光が会場を包む。ステージが上がり、かがやく世界に黄色い歓声が上がる。

『盛り上がる準備は出来てんのかー！！』

『おぉぅ〜！』

まるで夢の国だ。

かがやくステージに立つ彼らは人気急上昇の7人組アイドルグループ・pre2nts（プレセント）。メンバーの一人が人気バンドとコラボした曲が跳ね、その波に乗って多くのファンを集めている。

そして、私・古森由結もpre2ntsのファンの一人だ。

無趣味・無特技の平凡、もはや空気と呼ばれる現役大学生。そんな私を変えてくれたのは…、、

『pulin2（ぷりんず）～！今日は騒げぇーー！！！』

pre2ntsの愛され末っ子・村松大祐。ほかのメンバーに比べてメディア出演は少ないく知名度は低いものの、芸能経験未経験ですぐグループに加入し日に日にパフォーマンスの腕を上げる努力家だ。23歳と私と近い年齢にも関わらず、私と人間として天と地の差があるだろう。実際現在ステージに立っている彼は愛おしいほどに輝いている。

私はただそれを眺めることしかできない。それがアイドルと一般人の壁。この距離が一生縮まることはない。最初で最後の私の推し。最初で最後の恋。なのに、その思いが届くことなんてありゃしない。その現実がいつまでも苦しかった。

彼らにはまったことで、彼に出逢ったことで、

私の平凡で平和な生活が狂わされるなんて、この時の私はまだ何も知らない・・・