第83話

黙々と無言・無表情で食べる社長だが『食べてくれて良かった』と

自然に笑みを浮かべ、後片付けをするためにキッチンに戻ろうとすると。


「木瀬……」

「はい?」

「……ありがとうな」


 ツンデレか?と思うくらいあの冷酷社長からの感謝の言葉に不意打ちを喰らってしまい、イトカは少し驚く。


「何言っているんですか。お礼を言われる事は何もしてないですよ。前に社長が私にしてくれた事と同じ事をしただけ」


 新しい生活に慣れなかったイトカを気に掛け手料理を振舞ってくれたお返しだと伝えた。


「そうか……そういえばそんな事もあったな」

「今日はあの時と、まったく逆ですね」

「あぁ……確かにな。だがどうして俺に飯を?」

「鮫島秘書が言ってました。最近の社長、食事もまともに食べてないって」

「そう、だったか?」


 自分の状況を自覚していなかったのか『そういえばそうだったような…』と曖昧な反応。


「無自覚だったんですか? それこそ危ない。身体あっての仕事なのに、倒れたらどうするつもりですか」


 イトカが説教染みた事を言う。

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