第49話

本来、あってはならない事だが、シバ社長の秘書になろうとしていたにも拘わらず彼の経歴を調べてなかったイトカ。

 実はこの社長、元はプロの料理人でこのビルの会員制バーと高級レストラン経営者でもあるのだ。


 だから当然、料理も出来る。専門分野なのだから当たり前だ。


「俺自身の生活リズムが不規則だから家で作る事は滅多にないし、飯はビル内で済ませているんだ」

「あー……そうだったんですね」


 絶食悪魔だと思っていた社長は、ごく普通の人間だったんだなと納得。初めて知った真実だ。


「食ったら後片付けはいいから、お前はもう少し寝ろ」

「え、でも仕事……」

「今日は休め。休養が社長命令だ。それと今後はしっかり飯を食え。また倒れられても困るからな」

「はぁ……」


 昨日からの社長の優しい態度が妙で、本当に同一人物なのかとさえ疑ってしまうほどその変わりように調子が狂う。


 同時に不思議な気分。


 初めて知る意外な一面に、胸の奥がざわついた――


 社長の優しい命令に素直に甘え、だだっ広い豪邸で1人、大人しくゆっくり休ませてもらい後日、心身共に復活したのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る