5章:社長の危機

*守る為なら。

第50話

イトカが体調を崩した一件から社長は与える仕事の量をセーブし、今までより断然やりやすい環境になった。

 あいかわらず変わらない事と言えば……


「だからそうじゃないだろ! 何度言えばわかるんだ!」


 このキツイ口調だ。万年筆をデスク上で小刻みにトントン当てながら、電話の相手に怒鳴っている。

 癇に障ったのか虫の居所が悪かったのか、やはり糖分が足りていないせいだなと密かに呆れるイトカ。


 だがそのイライラの原因が何なのか、答えはすぐにわかった。


「失礼するよ」


 扉が2回ノックされたかと思うと社長が返事をする前に開けられ、ズカズカと遠慮なしに入ってきたのは60代の男。


 光沢ある高価そうなスーツを身に纏い明るめなピンクのネクタイと、腕に光るは高級時計と腕輪。

 その派手さとは裏腹に、はち切れんばかりの腹の肉はベルトの上に乗り頭皮が見えるほど薄い黒髪を、ワックスでペッタリと七三分けにしている。

 その見た目のインパクト以上に強いのは、どぎつく甘ったるい香水の匂いだ。

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