第4話
気付いたら会社の自席にいた。
移動中、たしかに車窓から
なにか綺麗な風景なんかをみていたハズなのに
何ひとつ覚えていない。
付箋がいくつかモニタに貼ってある。
昨日は終日クライアントの会社にいたので、
この席に座ることがなかった。
誰かからのいくつかのメモに目を通しながら
背広のポケットからスマートフォンを出しデスクに置いた。
画面は黒いまま。
パソコンでたまったメールの処理、
エクセルで見積もり、同僚と昨日のクライアントでの対応報告。
中堅の広告代理店の仕事は忙しい。
広告を作っている時間より、
広告に関わる人間の調整の方が何倍も労力がいる。
人間を調整する仕事。
本当はなんの商品もサービスも宣伝していないことに、
自分が一番気付いていた。
気付いていたけれど、
その疑問を持つ気持ちは去年あたりに置いてきてしまい、
今は立派に会社に馴染もうとする2年目の若手を演じてる。
演じているのかこれが自分なのか、もはやわからない。
分からないくらい考えたくない。
気付けば時計を見ると遅めの午後だった。
今日は天気も良いし、コンビニでパンを買って
公園でぼーっとしたかった。
やっとスマートフォンを確認する気持ちになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます