第5話

コロッケが入った総菜パンとパックの牛乳。

ストローを挿して牛乳をチビチビ飲む。

半分まで食べたコロッケパンを持って

スマートフォンに顔を向ける。

画面のロックが開き、たまっていた通知が一気に開く。

 


『さっきはごめん。

 問いただした。

 君の人生は君の物なのに。

 どうして嘘をついたのか、

 許せなかった。』



ハルからのメールは短かった。

僕はハルに隠している事がある。

どうにか今までは上手く誤魔化してきたけれど、

昨日の夜、ついに嘘がバレてしまった。


話をあやふやにしたまま寝てしまい、

朝、もう一度問い詰められてなんだか面倒くさくなった。

冷めたコーヒーが入ったマグカップを

シンクに片付けずそのままダイニングに置いたまま家を出た。

小さいけれど僕なりの反抗。


どう返事をすればいいか迷った。

迷って考える事に疲れてしまった。

そのままスマートフォンを放置していたら、

何時もの黒い画面に戻った。


もういいやと思った。

返事を辞めて残ったコロッケパンを噛みながら牛乳で流し込む。

旨くもまずくもない。

ただのコロッケパンが胃に収まっていく。


今日はノー残業デー。

ノー残業デーは僕が嘘をつく日。

時計には水曜日と表示していた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る