第3話
後日、2人だけで渋谷のミニシアターへ出かけた。
(友人は誘ったがその映画に興味がなく来なかった)
見た映画の感想で意見が合い過ぎたのがいけなかった。
盛り上がって注文数が分からなくなった檸檬サワーの、
生檸檬が高く積まれたテーブル。
柑橘の香りが心地よかったのもある。
酔ったまま我が家にハルが着いてきてしまい、
そのまま僕らは恋人になった。
僕らの恋は燃えるような情熱的なものではない。
サボテンの鉢植えのように静か。
日当たりがそこそこの場所で息をしながら、
じんわりする恋を好んだ。
派手さはないけれど、居心地の良さがお互いに心地よい。
双方の家をいったり来たりしながら数ヶ月を過ごし、
面倒だし家賃も半分の方が生活が楽だねとなり同棲をはじめた。
どこにでもいる都会で暮らす恋人らしい恋人たちだろう。
ハルは僕より十歳も年上だ。
それは出会う前からそうだし、
これからどれだけ一緒にいても変わらない。
ずっと。
十歳離れていると、知っている曲が違うとか、
服のセンスが分からないとか、
色々危惧することはあったけれど、
僕らを繋ぐ映画では、十年くらいは誤差みたいなもので、
ふたりで加入しているNというサービスなんかは、
映画の生まれた年をごちゃ混ぜに僕らに勧めてくる。
休日にそれをダラダラみては、
ダイニングテーブルでああだこうだ話す。
家の中で話飽きると、そのまま近所の居酒屋に移動して、
お一人様二千円くらいの会計で済むような、
なんでもない呑みをする。
大きなジョッキを細い両手で抱えるように持ち、
ほろ酔いで好きな映画の話をするハルはかわいい。
年上とか関係なく、ただただハルという人がかわいい。
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