第13話

「スーとリッツちゃん、もしよかったらなんだけど、僕らの結婚式に遊びに来ないかい?」


私はスーと顔を見合わせて、うん、とうなずいた。


「行きたい!」



画面の向こうの初々しい新しい夫婦は、嬉しそうに肩を組みながらほほえんでいた。


「大きな結婚式は香港でちゃんとするんだけどね、ニューヨークの方が、学生時代からの本当の友人が多いから、こっちではレストランでカジュアルなパーティーをしようと思ってるんだ。


ボストンからならそう遠くないし、みんなに妹を紹介したい。


本物のリッツちゃんにも会いたいしね(笑)


旅費はこちらからチケットを送るし、宿泊はウチに泊まればいい。」



この国から旅立つ最後の旅は、スーのお兄さんの結婚パーティーを兼ねたニューヨークツアーになった。


小さな旅行バックをエマから借りて、スーと私は一緒にニューヨークへ行く。


ドレスは持っていないから、キレイめなワンピースにコサージュをつけた。


鏡の前で「どうかなぁ」とエマに相談すると、綺麗なオレンジ色のスカーフと、大ぶりのアクセサリーを貸してくれた。



「パーティーはドレスの値段じゃなく、気持ちよ。だからなるべく華やかにしていった方がいいの。」


エマはこういう時、スペイン人の血が騒ぐらしい。


どういう感じなのかよく分からないけれど、とにかく、私の3倍くらいはドキドキワクワクして体中から祝福が沸いてくるのだそうだ。




いつもより少し高めのヒール。


ビーズとスパンコールで覆われた華やかなバッグ。


フォーマルではないけれど、エマのチョイスは本当に華やかで綺麗な色で、私まで元気が沸いてきた。



「リッツ、いいじゃない!その赤色のワンピースが本物のリッツクラッカーみたいよ!」


真っ赤ではないけれど、深いオレンジ色の太陽の様な色のワンピースが部屋の中を明るくする。

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【小説】嘘のあとの、優しいユメ。 アラタ ヨーク @ARATA_YORK

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