第12話

スーのお兄さんはニューヨークで両親と同じ貿易関係の仕事をしている。


スーとお兄さんは9才も年が離れているせいか、たまにスーがスカイプ(インターネット電話)で話をしているのを見ると、ほほえましいほど仲が良かった。


スー曰く、「こんなに年が離れてると、喧嘩にすらならない。」との事。


もともと香港の人たちは家族の絆と年齢の上下関係をとても大事にするらしい。


だからスーは兄をとても慕っているし、兄はスーを大切に守っている。


何度かスーのお兄さんとはスカイプで話したことがある。


とても聞き取りやすい綺麗な英語を話す。


育ちの良さと知性がにじみ出た微笑みは、眼鏡越しに伝わってくる。


目と口元がスーとよく似ている。




「ついに、結婚することになったよ。」


先日、照れくさそうに、画面の向こう側のお兄さんは、顔を赤くして照れ笑いしながら、私たちに報告してくれた。


「Congratulations!」


私たちも笑顔になって拍手をした。



パソコンとインターネット回線を通して、私たちの拍手はニューヨークまで届く。


「おいで!ジジ!!」


お兄さんは横を見ながら、叫んでいた。


するときっとはじめから隠れていたのだろう。


画面の中にジジさんが映った。


HELLO!!と手を振る華奢で小柄な優しい笑顔のおっとりした感じのカワイらしい女性が、ひょこんと出てきた。


「紹介する。僕のお嫁さんになる人、そしてスーのおねいさんになる人、ジジだよ。」


ジジさんは微笑みながら照れくさそうに、よろしくねとあいさつした。


「ついにジジさん、私のおねいちゃんになっちゃうんだ。なんか変な感じがするし、でもうれしいよ。」


スーはほんの少しのヤキモチとたくさんの祝福の顔で言った。


私は、そんな一つの家族の生まれる瞬間を、一緒に過ごすことが出来てとても感動した。




ジジさんのスーのお兄さんは大学の頃からおつきあいをしていたらしい。


お互いに香港からの留学生で、ニューヨークで出会った。



きっと言葉にはしないけれど、二人にはたくさんの事件があって、その結末に、今、家族という答えを手に入れたのだろう。


スーも何度かジジさんに会っているので、きっと近いうちにこうなるだろうと思っていたと言っていた。

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