第9話
色んな国の色んな人が、一つ屋根の下に暮らしている。
当たり前だと思っていることが、実は自分の思い込みだったという事にしょっちゅう気付く。
本当に些細なちょっとしたこと。
その「ちょっと」の積み重ねが、この世界が仲良くできない問題を作ることになるし、その「ちょっと」を分かち合えば、きっと私たちはもっと仲良く暮らせるのだろう。
そんな小さな小さな発見が、花園で育った私には新鮮で嬉しかった。
私が探していた時間はここにあった。
やっと。
自分で一つずつ、世界の欠片を見つけていくようだった。
世界はそんなに悪いものじゃない。
世界は本当は私も私じゃない人も、同じように、そこに、ただ、ある。
エマは洗濯機の前でポットに入れてきた珈琲とビスケットの箱を持ってきた。
赤くて日本でもよく見る「リッツ」という名前のビスケット。
エマはこれが大好きで、かならず部屋にストックがある。
「レポートばかりじゃ、椅子に生えるキノコになってしまうじゃない。ちょっとお茶でもしましょうよ。」
エマのそういうみんなを元気にしてしまう言葉や笑顔や気遣いや態度は、本当に嬉しくなるほど素敵だった。
すぐに躊躇して、なかなか出来ない私には、エマは本当に輝いていて、憧れだった。
「またリッツなの?太るんじゃないの?」
スーは笑いながらも2枚袋から取り出して、1枚を半分に割って食べた。
サクッという乾いた音がランドリーに響く。
私たちも続いてモグモグ食べながら、コーヒーを飲んだ。
プラスチックの真っ赤や真っ黄色なコップは、でも、両手であったかい。
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