第8話
ドアのカギをかけて廊下に出ると、階段の踊り場に、チェンスーとエマがいた。
「スーも今日は一緒よ。」
エマはニッコリとほほえんでスーの洗濯カゴを軽くポンポンと叩いた。
スーの洗濯カゴの中は山盛りパンパンに洗濯物がたまっている。
「スー、ずいぶんためたねぇ。」
私はスーの洗濯物を目で合図して笑った。
私たちの寮はみんなでランドリーを使う。
貧乏学生が多い必然性で、洗剤も柔軟剤もみんなで割り勘で共有にする。
その方が大容量のお徳用が買えるし、余ったり足りなかったりしないからいい。
そのおかげとでもいうか、学生はみんなおんなに匂いの服を着ることになる。
タオルもランドリーも廊下も、みんな同じ匂いがする。
アメリカらしい溶けそうに甘いピンク色の匂い。
私たちがハグするとき、その同じ匂いっぷりに、つい笑ってしまう。
ランドリールームは、珍しく空いていた。
誰かが回している洗濯機が一台あるだけで、人はいなかった。
「ラッキーね!私たち。今日は待ち時間なしよ。」
三人で空いていた洗濯機に洗濯物を投げ込む。
アメリカの電化製品はなんでもとにかく大きい。
おかげで、私たちのように小柄な女の子の服なんかは、いくら入れてもちっともいっぱいにならない。
下着もTシャツもパーカーもバスタオルもお構いなしになんでも入れる。
ここに来て分かったことは、日本人は洗濯がとても丁寧なんだって言うことだった。
来たばかりの頃、私は下着は下着、外着は外着、タオルはタオルで、分けて洗濯をしていた。
そんな私を見てエマは驚いていた。
「どうしてそんな面倒なことをするの?どれも綿100%みたいなもんだし、洗濯機は大きいから1回で入るじゃない。」
私の隣でエマは何でもかんでも洗濯機に放り込んでいた。
「ほら、下着ならネットにいれればいいし。」
そういって私に99セントショップで買ってきた洗濯ネットをくれた。
自分の概念的に洗濯ネットは白だと思っていたのに、エマがくれた洗濯ネットは蛍光のような黄緑だった。
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