第33話
「……す……ず…」
その時、微かに彼の声が聞こえた。
確かに私の名前を呼んでる。
聞こえた…優しい彼の声…。
良かった…これでもう私に思い残すことはない。
だから最後に彼の顔を焼き付けておきたいのに、涙で見えないよ…。
声を聞けた喜びからなのか、会えなくなる切なさからなのか…今の涙はどっちなんだろう。
「聡ちゃん!今までありがとう!笑顔を忘れないで…幸せになってね!」
夕陽が沈みかけて町が赤く染まっている。
もうすぐ月が顔を出して、ここからたくさんの星が彼の上に広がるね。
そして見えていた景色がだんだんと薄れていき、涙でぐしゃぐしゃになりながらがんばって作った彼の笑顔が最後の記憶となった。
「鈴ーーーっ!!」
消えていく瞬間、彼に強く呼ばれた気がするけどもう確かめる術もなく、私の不思議な六日間は終わった。
でもきっともう心配いらないよね。
私は彼の思い出の中にいる限り生き続ける。
今度こそずっと一緒…。
それで十分なの。
その後私の魂がどうなったかは分からない。
結局、あの声が何なのか分からなかったけど、例え悪魔の契約だったとしても構わない。
おかげで彼ともう一度会うことができたのだから…。
私に最後のチャンスをありがとう。
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