第32話
『答えを聞かせてもらおうか。』
あの声だ。
しかし正体がバレた以上は無条件で魂を回収されるのかと思っていた。
『途中なかなか面白いものを見せてもらったからな。選択を許そう。』
この声には、何でもお見通しだったようだ。
だったら答えは知っているでしょう?
『…契約は果たされた。お前の魂を捧げよ。』
彼とは本当にお別れなんだとそう思った時、彼は驚いた目でこちらを見ていた。
私の身体が光に包まれて昇天しようとしていたからだけじゃない。
猫の姿を解かれた私は元の姿に戻っていたからだろう。
彼は持っていた棒を落とし、駆け寄ってくる。
必死で叫んでいるが声が出ずに表情が苦しそうだ。
側に行きたい…。
この腕で彼を抱き締めたい…。
しかし私の体は徐々に薄くなっていき、重力など関係なくフワリと浮き始めた。
それでも彼は消え逝く私に叫び続ける。
彼はすでに足が消えている私に手を伸ばす。
私も彼に向かって手を伸ばしたが、互いの温もりを感じることはできなかった。
どんどん遠ざかる私に向かって、彼は空気を掴むように何度も何度も空を切る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます