第31話
きっと弱いのは私の方だったね。
彼は私がまたいなくなると知ったらどうするだろうか…。
もしかしたら二度目はもう戻れないかもしれない。
なら、一緒に連れていった方が彼は喜ぶのではないだろうか…。
しばらくして彼が起き上がると、突然何かを思い出したようにどこからか木の枝を探してきた。
そして砂地に何かを描き出す。
四角く枠を描き、中をいくつかに区切る。
そして台所、浴室、リビング、寝室と文字を書いていく。
―今のマンションは引き払って、二人で住める家を買うんだ。窓は広めに作って毎晩星を見れるようにするんだ。―
嬉しそうに話しながら、彼はあのプラネタリウムのチケットを見せる。
―これは観れなかったけど、こうやって毎日星を眺めて、いつか本当にオーロラを見に行くんだ。―
そして彼はまた次の理想の家を描いていく。
よくこうやって二人の未来を話していたよね。
バカだ…
私はまた同じ失敗を繰り返すの?
彼はこうやって輝く未来を描いているのに…。
人の未来を奪う権利は私にはない。
彼を信じよう。
私は彼の姿を眺めながら一歩づつ離れる。
いつの間にか太陽は沈みかけて赤い光が周辺を染めていた。
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